日本の漫画やアニメ、音楽は海外にもファンが多く、今後さらに成長が見込める分野だ。魅力と発信力を一層高めるためには、若手の育成に力を入れる必要がある。
海外での活躍を目指す若手の漫画家や音楽家らを育てようと、文化庁は、独立行政法人「日本芸術文化振興会」に基金を新設することを決め、2023年度の補正予算に60億円を計上した。
海外で実績があるクリエイターらが中心となり、若手を育てながら、新しい作品づくりに挑む。今後、支援を希望する団体や企業を公募するという。
これからの日本の文化芸術を担う新しい人材の発掘につながるよう、斬新で創造的な取り組みを目指してもらいたい。
日本は、映像や音楽、ゲームといったコンテンツ産業の国内売り上げ規模が年約14兆円で、米国、中国に次ぐ世界第3位だ。一方、海外では5兆円に満たない。
音楽などは、世界を魅了する潜在力がありながら、海外への売り込みが不足していると指摘されている。音楽グループ「BTS」を世界的なスターに押し上げた韓国と比べても、戦略が不十分だと言わざるを得ない。
日本では少子高齢化が進み、国内市場は徐々に縮小することが予想されている。今のままでは産業が衰退しかねず、海外市場の開拓にも積極的に取り組むべきだ。
国はこれまでも、若手クリエイターを支援してきたが、公演ごとの助成や、海外研修の旅費支給にとどまってきた。
今回は企画段階から資金面で援助し、国内での上演や展示に続き、海外で開かれる見本市への出品やイベントへの参加などを3年ほど継続して支援するという。
クリエイターが海外のファンと交流したり、ビジネスの相手と交渉したりできるよう、語学力の向上にも努めてほしい。
文化芸術が花開くには、一定の時間を要する。短期的な結果ばかり追い求めるのではなく、長期的な視点で支えることが重要だ。
経団連は、こうした分野の海外の売り上げ規模を33年には15兆~20兆円に増やす目標を掲げている。企業側も、新たな市場の開拓を支援するなど、官民挙げて取り組む体制づくりが欠かせない。
最近は、作品がインターネットを通じて拡散され、世界中で人気に火が付くケースがある。音楽ビデオや映像作品に外国語の字幕をつけるなど、情報発信の方法にも工夫を凝らしてもらいたい。