水道管の耐震化 優先順位つけ急ぎたい(2024年2月22日『東京新聞』-「社説」)

 能登半島地震の被災地では断水の長期化が深刻だ。耐震化されていない水道管が広範囲で損傷したためで、水の出ない避難所では被災者の苦労が続く。能登に限ったことではなく、水道管の耐震適合率は全国平均でも4割ほどとお寒い状況だ。避難所周辺などを優先して耐震管への交換を急ぎたい。
 発災後7週間を過ぎても能登6市町の約2万2千戸で上水道が復旧していない。復旧率が8割を超えた市町もあるが、石川県輪島市珠洲市はまだ3割前後。熊本地震では1週間で約9割、東日本大震災でも同じく57%が復旧しており、能登の遅れは顕著だ。
 浄水場から配水池までは復旧しても、そこから各家庭につなぐ水道管の継ぎ目が各所で破損=写真。全容を把握しきれていない。復旧には地中に埋まった水道管の漏水箇所を見つけ、新しい管とつなぎ替える地道な作業が必要だ。地上に応急的な仮管を設けている箇所もある。全域での断水解消は3月末の見込みという。
 厚生労働省によると、2021年度末で水道管の耐震適合率は全国平均で41・2%。石川県はさらに低い36・8%にとどまる。被災地の志賀町は10・4%、七尾市21・6%、珠洲市36・2%だった。
 耐震管への交換費用は水道料金に跳ね返る。人口減の奥能登では水道事業経営が厳しく、水道料金は金沢市の約2倍で、各市町はさらに負担を強いることに二の足を踏んでいたのが実情だ。どの高齢過疎地にも共通する課題だろう。
 同省によると、耐震化以前に、耐用年数の40年を過ぎた水道管は全国で約15万キロに及ぶ。国は、更新を進めつつ、28年度末の耐震適合率の目標を60%とする。
 耐震化では、例えば名古屋市の取り組みが参考になろう。同市では災害時の避難所となる施設につながる水道管を優先的に耐震化。周辺のマンホール内には水道管から直接取水できる蛇口も取り付けられ、万が一の際は、その場で給水場が開設できる仕組みという。
 国は4月から水道行政を国土交通省に移管する。重要なインフラと位置付け、耐震管への交換が進むよう手厚く支援してほしい。