能登被災地のインフラ復旧 工夫して加速させたい(2024年2月17日『山形新聞』-「社説」)

 能登半島地震が起きてもうじき7週間。道路の緊急復旧は進むが、断水の解消には時間がかかっている。被災地のホテルなどの営業もままならず、土木作業員やボランティアの多くは金沢市から車で通わざるを得ない。本紙は発生から1週間ほどたった先月初旬に続き取材班を派遣した。現地からの報告によれば、通行できるルートが増えているものの段差だらけという。

 被害が甚大だった半島北部の「奥能登」では、倒壊した建物が道路の両側に連なるなど発生当時のままの状況だ。工夫を凝らし復旧・復興を加速させたい。

 一方向からしか道路がない半島では、土砂崩れで使えなくなれば孤立する地域が生まれやすい。現在、孤立集落はなくなったが、道路の亀裂や崖崩れによる通行止め区間の多さから移動に時間を要している。片側通行など暫定的な復旧のため、被災地への往復に時間がかかり、現場で十分な作業時間を確保できないのがネックだと指摘できる。

 これを改善するには、道路や水道の復旧に当たる作業員などが宿泊し資材も保管できる拠点を、石川県七尾市輪島市に早急に設けるべきだ。金沢市から通うよりも時間のロスが減り、仕事の効率が上がるはずである。

 今回の地震を教訓とするなら、事前の備えとして拠点の設置場所を選定しておく必要があろう。重機が使える建設会社との連携も重要だ。普段は道路の維持管理の仕事をし、災害時には各地域で緊急復旧に取りかかる。こうした会社が各所にあれば、不通区間を双方向から工事することで復旧を早められるだろう。

 水道は今も輪島市珠洲市のほぼ全域など約3万戸が断水の状況だ。多くの地域で仮復旧には2月末から3月末までかかる見通し。人手と時間がかかる工事で仕方ない面もあるが、外部からのさらなる支援が欠かせない。

 大地震が想定される地域を中心に水道の耐震化が行われている。人口減少に対応した効率化を理由として広域化も進む。だが、能登のような地震規模では被害は免れない。広域化に伴い被害は広範囲に及び、復旧に時間がかかる恐れが強いことを認識しておきたい。

 断水を短期間で終わらせるには、基幹となる管路の耐震改修を進めて壊れにくくするのが基本だ。同時に、避難所や、災害時の役割が大きな病院、復旧拠点、避難者に開放するホテルなどについては、普段から井戸の併用ができれば理想的だ。断水の影響の大きさを考えれば、自治体は、災害時にも給水支援に頼らず、井戸や河川を使って水を確保する政策を進めるべきだろう。

 石川県では約7万棟の建物が被害を受けた。県は全半壊した住宅のがれきなど災害廃棄物は約240万トン、年間ごみ7年分に相当すると推計する。2025年度末までの処理完了が基本方針だ。

 目の前からがれきがなくなれば、復興への弾みとなる。事業者による解体を急がなければならない。ただ、地元の焼却施設だけでは処理に時間がかかる。東日本大震災では、本県はじめ近隣県の団体・事業者が広域的にがれきを受け入れた。今回も同様の支援が望まれる。