ガザの飢餓 必要なのは即時停戦だ(2024年3月13日『』信濃毎日新聞-「社説」)

 パレスチナガザ地区への苛烈な攻撃は、5カ月余を経てなお、やむ兆しがない。食料の援助も届かず、飢餓が深刻化して、餓死する人が相次いでいる。

 一時的な戦闘の休止ではなく、即時の停戦が必要だ。強硬な姿勢を崩さないイスラエルと、後ろ盾である米国に対して、各国、国連はなお一層、働きかけを強め、悪化の一途をたどる状況を一刻も早く止めなければならない。

 飢餓がとりわけ深刻なのが、ガザ地区北部に残る人々だ。イスラエル軍空爆や検問のため、国連の援助機関が入れず、食料の配給が途絶えた。食べ物が底をつき、住民は家畜の飼料を食べて飢えをしのいでいるという。

 世界保健機関(WHO)は今月初め、北部で子どもたちが餓死していると報告した。国連は、ガザの飢饉(ききん)は避けられないと警告している。ガザ地区全体で、人口の4分の1にあたる57万人余が飢餓の一歩手前の状態にある。

 11日からのイスラム教の断食月ラマダン)を前にした休戦の交渉は決裂した。イスラエルは、ラマダン前に合意できなければガザ地区南端のラファに地上侵攻する構えを見せていた。

 避難民が押し寄せ、150万人近くがひしめくラファへの侵攻は想像を絶する惨事につながる。米国内を含め国際社会から強い批判の声が上がり、バイデン米大統領も「越えてはならない一線」だと述べて、けん制した。

 イスラエルに、それを聞き入れるそぶりは見えない。ネタニヤフ首相は「やめろと言うのは、戦争に負けろと言うのと同じだ」と反発をあらわにしている。

 バイデン政権は、次第に非難の語調を強めつつも、イスラエルを支持する姿勢を変えようとはしない。とめどない大量殺りくによってガザの死者が3万1千人に達し、餓死者も相次ぐ極限状況に至ってなお、巨額の軍事援助を停止しないことがその表れだ。

 米軍は今月、空中から援助物資の投下を始めた。さらに、ガザの沿岸に大型輸送船が接岸できる桟橋を設置して物資を運び入れるという。だからといって、ガザへの攻撃に加担している責任を免れられるわけではない。むしろ、イスラエルが攻撃を続けるお墨付きを与えることにもなる。

 米政府がなすべきは、イスラエルを正面から制止し、停戦の道筋をつけることだ。それができるのは米国をおいてほかにない。そのことを、日本をはじめ各国は強く促す必要がある。