ガザ人道危機 即時停戦し飢餓救済を(2024年3月10日『北海道新聞』-「社説」)

 パレスチナ自治区ガザでのイスラエルイスラム組織ハマスの衝突は、発生から5カ月が過ぎた。
 イスラエル軍はガザの住民に激しい攻撃を続けており、死者は3万人を超えた。犠牲者の大半は子どもや女性である。約220万人の住民は逃げる場所がなく、支援物資の不足で飢餓が深刻だ。
 人道危機が極めて憂慮される。
 それでもイスラエルは攻撃をやめない。150万人以上の避難民が密集するガザ最南部ラファで本格的な地上侵攻を準備している。
 ラファは人道支援物資の数少ない搬入拠点だ。侵攻が始まれば被害は桁違いに増える。
 米国やカタールなどの仲介で休戦や人質解放を巡る交渉が続いている。10日ごろに始まるイスラム教のラマダン(断食月)前の合意を目指すが、難航している。
 これ以上犠牲者を出してはならない。イスラエルは攻撃をやめ、ハマスは人質を解放して双方は即時停戦に応じなければならない。
 イスラエルは戦闘開始直後からガザを完全封鎖して攻撃した。支援物資は市民に行き渡らず水や食料が極度に不足している。
 国連によると人口の4分の1が飢餓の瀬戸際にあり、栄養失調による死者は20人に上る。
 先月末にはガザ北部で、支援物資を積んだトラック付近に集まった群衆にイスラエル軍が発砲し、100人以上が死亡した。
 国際社会が非人道的だとして非難を強めているのは当然だ。
 事態を悪化させているのが国連パレスチナ難民救済事業機関UNRWA)への資金拠出停止だ。職員がハマスの奇襲攻撃に関与した疑いがあるとイスラエルが主張し、日米など16カ国が停止した。
 ただ、イスラエルはいまだに国連に証拠を提示していない。
 UNRWAは国連総会で活動停止に追い込まれかねないと訴えた。各国は疑惑と人道支援を切り離し、拠出を再開するべきだ。
 イスラエルの後ろ盾である米国はガザ支援として空から食料を投下した。バイデン大統領は一般教書演説で、ガザの地中海沿岸に臨時の港も建設すると表明した。
 それよりもイスラエルを説得して直ちに停戦させるのが先だ。
 イスラエルと米国を敵視するイエメンの親イラン武装組織フーシ派がアデン湾で商船を攻撃し、乗組員が死亡した。フーシ派の商船攻撃で死者が出たのは初めてだ。
 中東危機をさらに拡大させないために、ガザでの戦闘を一刻も早く終わらせることが不可欠だ。