政治資金のデジタル化 監視しやすいシステムに(2024年2月21日『毎日新聞』-「社説」)

総務省のサイトにある政治資金収支報告書のオンライン提出システムのトップページ。ほとんど使われていない拡大
総務省のサイトにある政治資金収支報告書のオンライン提出システムのトップページ。ほとんど使われていない

 「政治とカネ」の問題を解決するには、規制を強化するだけでなく、政治資金の公表システムを根本的に変える必要がある。

 派閥裏金事件を受け、自民党政治刷新本部は1月に出した中間とりまとめで「政治資金の透明性の徹底」を掲げる。しかし、政治資金収支報告書については「オンライン提出とすることを通じて政治資金の見える化を図る」としか書かれていない。不十分である。

 政党や政治家は通常、複数の政治団体を持つ。届け出は総務省都道府県選管、どちらでも可能だ。年1回公表される収支報告書はインターネット上で閲覧できるが、紙の書式をそのままPDFファイルにしただけである。

 裏金問題発覚のきっかけは、業界団体側のパーティー券購入の支出が派閥側報告書に収入として記録されていなかったことだ。業界団体側の報告書の提出先は都道府県選管と総務省に分かれている。

 業界団体と派閥が別々に提出した報告書を突き合わせ、矛盾を明らかにしたのが2022年11月の共産党機関紙「しんぶん赤旗」だった。自民党の5派閥によるパーティー券収入の過少記載を報道した。これを受けて上脇博之神戸学院大教授が改めて調査し、約4000万円の不記載があったとして東京地検に告発した。

 しかし、国会議員は約700人おり、地方議員は3万人を超える。すべての報告書を有権者がチェックするのは困難だ。

 「見える化」の鍵はオープンデータ化にある。コンピューターが直接読み取れる形式で公開することだ。検索や名寄せが容易になり、透明度は格段に上がる。オンライン提出は入り口に過ぎない。

 国際機関の17年の調査によれば、欧米や中南米の少なくとも13カ国でオープンデータもしくは検索可能な形で公開されている。

 政治資金規正法は、公表の目的を「政治活動を国民の不断の監視と批判の下に置く」ことと定めている。総務省都道府県選管の報告書を一元的に閲覧できるようにし、有権者に分かりやすい仕組みに改めるべきだ。

 政府はデジタル化の一環として「官民のオープンデータ化」を進める。そうであるなら、自らの足元から取り組むのが政治の責任だ。