意思疎通の努力を欠けば、対立が先鋭化するばかりだ。政府と沖縄県は関係の修復に向け、対話を続けていく必要がある。
木原稔防衛相が那覇市を訪問し、玉城デニー知事と会談した。地元での2人の会談は、昨年9月に木原氏が防衛相に就いて以来初めてだ。
政府と県は、宜野湾市にある米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設を巡り対立している。
県の代わりに工事の設計変更を承認する「代執行」を経て、政府は先月、埋め立て予定海域にある軟弱地盤の改良に着手した。法律の規定に沿った対応だが、県は環境への配慮などが不十分だとして反対姿勢を崩していない。
今回の会談でも、移設について「着実に進める」と述べた木原氏に対し、玉城氏は「基地建設に反対する民意をしっかり受け止めてほしい」と工事中断を要求した。
双方の主張は平行線をたどったが、重要なのは、今後も対話を継続していくべきだという考えで一致したことだ。
政府が進めている南西諸島の防衛力強化に、地元の協力が欠かせないことは明らかだ。県側の不信感がさらに増大し、双方の亀裂がこれ以上大きくなる事態は避けなければならない。
直接対話に加え、政府と県、宜野湾市が参加する「普天間飛行場負担軽減推進会議」などを活用すべきだ。
会談では、沖縄本島中部のうるま市のゴルフ場跡地に陸上自衛隊の訓練場を建設する計画も議題となった。
玉城氏は近隣住民らの反発を理由に、計画の見直しを要求した。これに対し木原氏は、うるま市などからの要望を踏まえ、再検討に応じる構えを示している。
今、政府に求められているのは、戦中・戦後を通じ、安全保障のため多大な犠牲を強いられてきた沖縄の人々の思いをくみ取ることだ。政府の施策に対する不安や反発を正面から受け止め、率直に意見交換できる場を設けていかなければならない。
地元の民意に反する形で辺野古移設を進めてきた政府が、ごり押しの姿勢を修正できるのか。沖縄だけでなく、日本全体が注視している。