まさに形だけの調査だ。これで納得する国民がいるとはとても思えない。

 自民党はきのう、派閥の政治資金パーティー裏金事件を受け、党所属の全国会議員を対象にしたアンケートの結果を公表した。岸田文雄首相は「必要な説明責任を果たしていきたい」と国会で述べていた。「政治とカネ」の一連の問題に対する、反省に立ったものであったはずだ。

 ところが、党は収支報告書の不記載があった85人の名前と金額は示したものの、不記載の経緯や理由、金の使途など肝心なことは質問項目になかった。野党が「極めて不十分」と批判するのも当然だ。これでは幕引きなどできるはずもない。

 A4用紙1枚きりで尋ねられた質問は、たった2問である。派閥の政治資金パーティーに関する収支報告書の記載漏れの有無と、あった場合は2018~22年の5年間の不記載額を各年ごとに記入するよう求める内容だった。

 85人が裏金とした総額は58千万円近くに上る。こんなアンケートでお茶を濁せるとでも思ったのだろうか。

 補足説明にも首をかしげざるを得ない。

 「当該相当額を別な項目に計上していたから記載漏れや不記載ではない」「還付金を個人から政党支部への寄付や借入金としたのは『収入が記載されないのはあり得ない』という会計士の指摘を踏まえた」。党幹部の聞き取りに対する説明は、資金の流れを国民が監視できるようにする政治資金規正法の趣旨を全く理解していない。

 「選管の指導でその他の事業収入として記載」というものまである。いずれも身勝手な言い訳に過ぎない。アンケートにある「わが党は今回の事態を真摯(しんし)に反省し、このようなことが繰り返されないよう政治刷新、党改革に取り組む」とのかけ声さえ、どこまで本気なのか疑わしくなる。

 収支報告書の訂正内容もひどいものだ。萩生田光一政調会長の政党支部は20~22年分政治収支報告書の訂正で、使途を「不明」とする支出を計上した。この点について9日の衆院予算委員会で首相は「数字が確定するまではあり得る」と開き直った。金額が確定すれば本人が再訂正について判断するとかわしたが、そんな収支報告が政治資金の非課税根拠にされていいはずがない。

 二階俊博元幹事長の資金管理団体は報告書の修正で、約3470万円もの「書籍代」を追加支出で計上している。民間では通用しない不自然な出納には説明が不可欠だ。

 きょうは首相も出席して、裏金事件の集中審議も予定されている。裏金事件の実態解明に、明確な道筋を示す局面ではないか。

 「公開できない政治資金などない」という野党の指摘はうなずける。立憲民主など4党は関係議員の説明の場として衆院政治倫理審査会の開催を求める方針で合意した。

 要求を拒む理由はない。首相が表明した通り、自民党は政倫審でまず説明責任を果たさなくてはならない。