首都圏の1都3県の自治体が設置する公営墓地で、複数の遺骨を合同で納める合葬墓と呼ばれる墓の数がこの20年で4倍に増えたことが、分かりました。専門家は、「離れて住む子や孫に墓を守ってほしいと言いづらいと考える人たちが、合葬墓を選んでいるのではないか」と指摘しています。
NHKは、先月から今月にかけて、首都圏の1都3県と、人口が10万以上の市の合わせて97の自治体に、公営墓地についてのアンケート調査を行いました。
その結果、これらの自治体にある公営墓地には、複数の遺骨を合同で納める合葬墓と呼ばれる墓が36施設に上り、20年前と比べて4倍に増えていることが分かりました。
内訳は、都立霊園が2から8に増加し、横浜市やさいたま市、千葉市なども新たに整備したことで、収容できる遺骨の数は、この20年間で38万体分増えていました。
合葬墓は、家族や親族が入る一般墓と比べて費用の負担が軽く、個人による管理も不要となるのが一般的です。
自治体側としても少ない面積の土地に、より多くの遺骨を納められる利点があります。
墓や終活に詳しいシニア生活文化研究所の小谷みどり代表理事は「核家族化が進み、離れて住む子や孫に墓を守ってほしいと言いづらいと考える人たちが、費用が安く管理が簡単な合葬墓を選んでいるのではないか」と話しています。
合葬墓への申し込み相次ぐ千葉市では
今、各地の自治体では、合葬墓への申し込みが相次いでいます。
そのひとつ千葉市です。2013年に初めて市営墓地に合葬墓を設置し、去年、樹木葬タイプのものを新たに整備しました。
この新たな合葬墓に、市が今年度、希望者を募ったところ、当初の募集数700件に対して5倍以上の3600件を超える申し込みがありました。
生前に夫婦など2人分をまとめて申し込む枠が特に人気が高く、60人分の募集に対して2300人以上の応募があり、倍率は38倍余りでした。
この市営墓地で、個別の墓石を建てる場合、永代使用料だけでも、最低62万円余りかかり、管理料も毎年5020円が必要ですが、樹木葬タイプの合葬墓の場合は、1体当たり4万円から6万円で、年間管理料などはかからないということです。
夫婦で申し込んだ70歳の男性は「子どもたちに負担をかけたくないと申し込みましたが、くじ運がなく、ダメでした。10年ぐらいは連続で申し込みたいなと思っています」と話し、58歳の妻は「倍率の高さに驚きました。時代を反映しているんだと思います。子どもたちがお墓参りする必要がないところがいいと考えました」と話していました。
75歳以上の枠に申し込んだ76歳の女性は「4回落選して、きょうが5回目でしたが、抽せんなしで受かることができてすごくほっとしました。私はひとり暮らしですが、合葬墓に入れば、他人様でも手を合わせてくれるのがいいと思っています」と話していました。