善人の顔をした悪意(2024年5月3日『山陽新聞』-「滴一滴」)

 場面は大学のカフェ。知り合ったばかりの女子学生が親しげに話しかけてくる。「私ね、未来セミナーっていうサークルに入っているの。ちょっとした心の持ちようで幸せになるこつを知ろうっていうサークルなの」。こんな誘いを受けた新入生の私は戸惑いながらも集まりに参加してみた…
▼若者らの悪質商法被害を防ぐため、消費者庁がネットで公開している映像の一部である。霊感商法の団体による偽装サークルの勧誘手口を被害者目線で疑似体験する内容だ
▼優しく接してくるサークルのメンバーに促され、高額な教材を買わされることになる。「親に相談してみます」と申し出ると「いい年なんだから自分で考えたら。だから駄目なんじゃない」と巧妙に言いくるめられる状況が生々しい
▼映像は被害者目線の動画や、シーン別に振り返る「復習動画」、大学教授による「解説動画」などがある。被害前に気付く力や断る力、一人で抱えず相談する力などトラブルを回避する“消費者力”を鍛えるのが狙いだ
消費者庁は「相手にぐっと押し込まれるような勧誘の疑似体験ができる。一度体験しておくことで、いざというときに役立つはず」と活用を呼びかける▼
今春からの新