憲法改正論議の停滞打破を(2024年5月3日『日本経済新聞』-「社説」)

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衆院憲法審査会では改憲の是非や内容をめぐる自由討議が続いている(4月25日)
 
 日本国憲法の施行から77年を迎えた。衆院憲法審査会では、緊急時に国会議員の任期延長を可能にするための改正を急ぐべきだとの声が強まっている。各党は議論の停滞を打破し、危機下での政府や国会の役割に関する考え方を有権者に示してもらいたい。
 現憲法は1947年5月3日に施行され、「国民主権」「平和主義」「基本的人権の尊重」の3つの原則が戦後の復興と経済成長の土台となった。こうした基本原則を堅持し、次の世代にしっかりと引き継いでいかねばならない。
 一方で日本は近年、深刻な大災害や新型コロナウイルス感染症など数々の困難に直面した。中国、ロシア、北朝鮮など我が国を取り巻く国々の軍備増強や圧力にどう備えるかも、先送りできない懸案として浮かび上がっている。
 衆参両院の憲法審は、こうした国家的課題にどう対応すべきかをめぐり自由討議を続けてきた。昨年の通常国会衆院憲法審は過去最多に並ぶ計16回開かれた。各会派による主張の論点整理にこぎ着けたのは重要な成果といえる。
だが今国会は自民党派閥の裏金問題などに焦点があたり、審議のペースが格段に落ちた。国を形づくる憲法論議は本来、党派対立とは一線を画すべきテーマだ。
 自民党憲法審で、大規模災害など選挙困難時に国会議員の任期延長を可能にする改憲原案作りを訴えている。公明党日本維新の会、国民民主党衆院会派「有志の会」も理解を示し、5会派が緊急時の国会の機能維持で足並みをそろえた意味は大きい。
 立憲民主党は「もっと慎重に多角的に議論すべきだ」との立場だ。共産党改憲に反対している。幅広い合意形成への努力を続けつつ、具体的な改憲原案の検討に踏み出すべき段階にきている。
 各党は9条や緊急事態条項、衆参両院の役割分担などを含め、新たな時代にふさわしい憲法の姿を積極発信してほしい。改憲案を丁寧に検討していく中で、国民的な議論につなげる選択もあろう。