能登でキャンピングカーが活躍中 応援職員の宿泊所不足&移動ロスを解消 居心地良さに戸惑う職員への声掛けは…(2024年2月15日『東京新聞』)

 能登半島地震の復旧要員の滞在拠点として、キャンピングカーが活躍している。宿泊地から現場までの移動時間を大幅に短縮でき、過酷な条件で働く人々のストレス軽減にも役立つ。(沢井秀之、井上京佳)
珠洲市が用意した応援職員向けのキャンピングカー

珠洲市が用意した応援職員向けのキャンピングカー

◆金沢まで5時間「移動はロス」

 車両の製造、販売業者でつくる日本RV協会(横浜市)が「各地から来た自治体職員の宿泊スペースがなく困っている」と、石川県の輪島、珠洲(すず)両市から相談を受けた。1月中旬以降に計60台を両市に送った。
 車両を運んだ協会理事の百田雅人さん(三重県鈴鹿市)によると、金沢市から珠洲市まで通常の倍となる5時間を要した。道路の陥没なども深刻。「宿泊のための移動は大きなロス。現地にとどまるのがベスト」と強く思ったという。
 キャンピングカーは電気、水、ガスを備え、電子レンジ、ベッドなどの設備も充実。個々の空間が確保され、緊張から解放される。

◆「落ち着いて休める」

 評判は上々で、避難所運営支援で四国から輪島市に派遣された男性職員は「思ったよりもよく眠れ、ヒーターも効く。仕事を頑張ろうと思えた」。現地に入った都庁職員は「居住空間が確保され、落ち着いて休める」と語った。
 1月4日から復旧要員として珠洲市に入り、キャンピングカーの導入を奥能登自治体に働きかけてきたのが、熊本市危機管理課の大塚和典さん(60)。2016年の熊本地震の経験を踏まえた。
「応援職員の生活環境も大事」とキャンピングカーを手配した熊本市職員の大塚和典さん=11日、石川県珠洲市で

「応援職員の生活環境も大事」とキャンピングカーを手配した熊本市職員の大塚和典さん=11日、石川県珠洲市

 熊本地震では、大塚さんら自治体職員は36時間連続勤務など激務が続き、1カ月ほどするとうつ状態になる人も出始めた。能登半島地震でも、車中泊や庁舎廊下に雑魚寝する職員がいた。「こんなぜいたくな環境で良いのか」とキャンピングカーの利用に戸惑う人たちには「支援する私たちが疲弊したらいけない。休んだ分、明日の仕事で返そう」と呼びかける。