博覧会国際事務局のディミトリ・ケルケンツェス事務局長=奈良市で2024年6月26日午後5時31分、大西岳彦撮影
2025年大阪・関西万博の会場隣接地(大阪市此花区)で整備中のカジノを含む統合型リゾート(IR)について、日本国際博覧会協会が会期中の工事中断を大阪府に求めていた問題で、博覧会国際事務局(BIE)のディミトリ・ケルケンツェス事務局長が30日、毎日新聞のオンライン取材に応じた。
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ケルケンツェス氏によると、6月に奈良市で開かれた国際会議の席で、吉村洋文知事から説明を受け、万博会期中にIR工事が行われることを初めて認識したという。「騒音や粉じん、景観・交通への影響、来場者への安全面で懸念点がある。IR工事が万博にネガティブな影響を与えてはならない」と、その場で懸念を伝えたと述べた。
一方、吉村知事は万博会期中のIR工事について、協会やBIEと共通認識があるものと理解していたと報道陣に説明していた。また、府とIR事業者が結んだ実施協定(23年9月)には、会期中の工事について、騒音や振動防止のための適切な対策をとることなどが明記されている。
ケルケンツェス氏は「万博が他のプロジェクトを壊すものであってはならない」として、騒音などの懸念点が解消されれば、会期中のIR工事は可能との考えを示した。現在、府と日本政府、事業者などが協会側の理解を得られるよう、対応を協議中。ケルケンツェス氏は「事業者は非常に協力的で、万博の重要性を理解していると聞いている」として、早ければ9月中にも具体策がまとまるとの見通しを示した。
ケルケンツェス氏は、開催まで8カ月を切った万博について「ポストコロナで初の大規模な国際イベントで、世界で戦火が絶えない中で行われる重要な意味を持つ。期待値は高い」と述べた。「参加国が展示内容を説明する時期に来ている」として、多くの参加国が日本を訪れ、万博で何を見せるのか説明することが、開幕に向けた機運醸成につながると強調した。【高木香奈】