万博中のIR工事中断要求 吉村知事「着地点見いだしたい」(2024年8月5日『毎日新聞』)

 2025年大阪・関西万博の会場隣接地に整備予定のカジノを含む統合型リゾート(IR)を巡り、日本国際博覧会協会(万博協会)が大阪府に万博開催中のIR工事の中断を求めた問題で、吉村洋文知事は5日、「IR事業者に最大限の措置を考えてほしいと伝え、回答を待っている状態だ。着地点を見いだしたい」と述べた。府庁で報道陣の質問に答えた。

【図表】想定来場者数や売り上げ…大阪IRの概要  

大阪市の人工島・夢洲(ゆめしま)で開かれる万博とその隣接地に整備されるIRの工事が並行することについては、府がIR事業者と結んだ実施協定でも前提とされていた。吉村知事は「国から(そのことを含めてIRの)事業認可を得ている」との認識を示した。事業者側が講じる騒音や振動防止対策で足りない場合、府市が新たな出費をするつもりがあるか問われると、「あり得ない選択肢だ」と否定した。

 吉村知事によると、6月下旬に来日した博覧会国際事務局(BIE)のディミトリ・ケルケンツェス事務局長から、万博会期中のIR工事について懸念を示され、IR事業者側に伝えたところ、「工事の中断は難しい」との見解だったという。7月25日、知事と万博協会の十倉雅和会長(経団連会長)が東京都内で面会した際にも折り合わず、府は事業者側にどのような措置を取りうるか、最終的な回答を求めているという。

 23年9月に府とIR事業者が結んだ実施協定では、万博会期中の工事を前提に、騒音や振動防止のために適切な対策を講じるなどとしていた。この点について、吉村知事は「十倉会長はご存じなかったのではないか」と述べた。

 IR予定地は夢洲内の約49万平方メートルで、万博会場と隣接。現在は液状化対策などの土壌工事が進み、今夏にも本体の準備工事に入る。本体工事は万博が開幕する25年春ごろに着工し、IRは30年秋ごろの開業を予定している。【戸田紗友莉】