道路の寸断で迅速な支援が難しかったとはいえ、地震発生から1か月が過ぎた時点でも、床で雑魚寝を続け、おにぎりや即席めんでしのぐ被災者が少なくなかった。その後、環境は改善されたが、今も避難所にとどまる人は多い。
災害関連死の大半は高齢者だ。避難所で集団生活を続けるうちに新型コロナウイルスやインフルエンザに感染したり、心身に負荷がかかって持病が悪化したりして亡くなった人が目立った。
日本はこれまで何度も災害に見舞われたが、そのたびに避難所の過酷な環境が問題視されてきた。災害発生時に助かった命が、その後の避難所生活で失われる状況は、あまりにやるせない。
避難所の運営は自治体の役割だが、対応にあたる職員自身も被災し、物資の調達や配布に手が回らないことが多い。加えて「災害時なので多少の不便は仕方ない」という考え方も根強いとされる。
災害の規模や地形が違うため単純比較はできないが、災害直後で 辛つら い時こそ、被災者が安心して生活できる環境が必要だ。官民挙げて被災者の健康を守ろうとする海外の姿勢には学ぶ点があろう。
日本でも一部の自治体が、車とトイレが合体したトイレカーや、キッチンカーを災害用に導入している。被災者目線を大切にして、各地で整備を進めてほしい。
経済界や医療界からは、災害時には国が司令塔となり、避難所の環境改善にも主体的に取り組んでほしいという要望が出ている。