能登半島地震2ヵ月に関する社説・コラム(2024年3月4日)

能登半島地震2ヵ月 被災者の今、見据えた支援を(2024年3月4日『中国新聞』-「社説」)

 

 年明け早々に石川県を襲った能登半島地震が起きて、2カ月が過ぎた。復興は少しずつ進みつつあるが、被災者が日常を取り戻すまで、まだ時間がかかりそうだ。

 大規模な断水が依然、続いている。避難生活を強いられている人も1万人を上回る。復興の土台となる生活再建に向け、課題が多く残っている。中でも、暮らしを支える上下水道や、寸断された道路網を含めたインフラの復旧を急がなければならない。

 能登半島地震による石川県内の死者は、関連死を含めて241人に上る。住宅被害は7万5千棟を超す。ピーク時に10万戸を超えた断水は約1万8千戸まで減った。最大震度7を観測した珠洲市や、輪島市七尾市とも4千戸を上回り、解決には程遠い。

 下水道の復旧も進んでいない。能登半島の6市町では、下水管の総延長の半分以上で汚水を流す機能を失った。2月下旬になっても、3割以上で復旧できていなかった。水洗トイレが使えないなど、衛生面も懸念される。

 生活再建のため、仮設住宅の建設も加速させなければならない。着工したのは3500戸を超すが、完成したのは1割足らずでしかない。

 草の根の支援をどう生かすかも課題だ。被災者を助けるボランティア活動が目詰まりを起こしているからだ。県への事前登録は3万人近いが、活動できたのは延べ5千人余り。2カ月で延べ100万人だった阪神大震災とは桁違いの差だ。行政主導での割り振りなどが響いているようだ。

 市町村がニーズを把握する仕組みというが、遠慮して声を上げない被災者がいるのではないか。被災者の役に立ちたいという熱意を生かせるよう、検証と、それに基づく改善が求められる。

 今月16日には、北陸新幹線金沢―敦賀福井県敦賀市)が延伸開業する。合わせて、観光支援の「北陸応援割」が石川など4県で始まる。

 当初は遅れてスタートさせることも考えていた。県内のホテルや旅館などに5千人近い2次避難者がいるからだ。旅行客を受け入れたいホテルもあり、観光など地場産業をもり立てることも県の重要な仕事である。ただ、苦境に追い込まれた被災者の現状を見据えて、きめ細かく支援することも必要だ。両立させる道を探らなければならない。

 政府の対応も問われている。住宅が被災した世帯に対する最大300万円の従来の支援金に、最大300万円を追加できるようにした。対象は能登半島の6市町を中心にした石川県だけ。当初は高齢者や障害者のいる世帯に限っていたが、ひとり親世帯や若者世帯にも拡大するという。場当たり的な感じは否定できない。政府として、いつどこで起きるか分からない地震を想定して、中長期的な支援を考えるべきである。

 私たちも問われている。能登半島地震の被災地の苦境は人ごとではない。関心を持ち、何ができるかを考え続けなければならない。教訓を学ぶと共に、自分たちの備えも確かにしておきたい。

 

能登半島地震2カ月(2024年3月4日『宮崎日日新聞』-「社説」)

◆つながり維持へ対応強化を◆

 能登半島地震の発生から2カ月がたった。今も1万人以上が避難生活を送る一方で、仮設住宅の入居も始まった。避難や住まいの形態が多様化し、複雑になってきた。被災者が移動を重ねても支援を継続し、地元とのつながりを維持できるような方向性が求められる。

 石川県によれば、被災した市町に2月末時点で約220カ所の避難所(1次避難所)があり、約5900人が暮らす。プレハブ型仮設に入った人もいれば、被害を受けた自宅に住み続ける「在宅被災者」もいる。

 被災地の外に出た人も多い。孤立集落の住民らを受け入れたホテル・旅館などの「2次避難所」、2次避難所に移るまでの一時的な「1・5次避難所」に計約4900人が身を寄せる。

 民間住宅を行政が借り上げる「みなし仮設」は約2千戸が契約済みだが、2次避難所同様、被災地から離れており、支援が届きにくい。

 石川県はそれぞれの被災状況や避難先、配慮が必要な持病などをそろえたデータベースを整備する。きめ細かい支援ができるかどうかは、この土台づくりが重要になる。長い避難生活の疲労やストレスで体調を崩して亡くなる「災害関連死」の対策も引き続き求められる。

 2011年の東日本大震災や16年の熊本地震では、関連死の約8割が3カ月以内に発生した。関連死は避難所だけでなく、自宅でも生じる。ただ、能登半島地震でも在宅被災者の把握は容易ではない。自治体によって全戸訪問で確認しているかどうかは分かれる。対応強化が必要だ。

 移動先の候補として仮設住宅などが示されたが、土地の制約上、用意できる戸数を希望件数が大幅に上回っている。戸数増加に努めてほしい。地元に近い場所を提供することが人口流出防止にもなる。

 注目したいのが、集落の空き地に長屋型や一戸建ての木造仮設住宅を建てる石川県の構想だ。工期はかかるが、将来撤去する必要がない。原則2年の入居期間終了後は、公営住宅への転用や払い下げもできる。古里に戻りたいが、自宅再建は資金的に難しい―。そんな高齢者の希望に沿える可能性がある。

 住み慣れた環境に戻ることが心身に良い影響をもたらす。その道筋を示すことで高齢者らの不安を払拭していきたい。

 04年の新潟県中越地震で全村避難した旧山古志村は、避難所も仮設住宅も集落ごとにまとまり、復興に向けた話し合いが進んだ。能登半島地震はまだ、復興の担い手である住民が広域に分散したままだ。地域の将来を話し合う場を意識してつくる必要がある。