減る書店 抜本的な支援体制整えよ(2024年4月24日『産経新聞』-「主張」)

 
書店の経営者と車座対話を行う斎藤経産相(右から4人目)=4月17日午後、東京都港区

 書店は新しい世界への入り口である。かつては、どこの街にも1軒や2軒はあった。

ところが今、そんな街の書店が危機にひんしている。出版科学研究所の調べでは、日本の書店数はこの10年で約3割も減った。

 減少に歯止めがかからぬ中、経済産業省が振興支援に乗り出す。書店を文化の創造基盤、コンテンツ産業の一部と捉え、対策を検討するプロジェクトチームを発足させた。有効な対策を講じてもらいたい。

 背景に活字離れもあるが、出版業界も様変わりしている。出版物の推定販売金額は、新型コロナ禍の需要増で近年少し持ち直したものの、平成8年をピークに減り続けている。

 一方、ネットやスマートフォンの普及で電子版は急伸した。特に電子コミックの成長が著しい。スマホで読む人が増え「縦スクロール」と呼ばれるスマホ向け様式も普及した。

 深刻なのが書店経営を直撃する「紙」の低迷である。その反動か、店に足を運んでもらおうと特色ある書店が増えてきた。特定のジャンルに特化した専門書店、カフェや雑貨店、映画館などを併設する複合型書店などいずれも個性が売り物だ。

 陳列を工夫する店もある。著者名の五十音順などで並べるのが一般的だが、本のテーマや内容によってジャンルを問わず陳列する「文脈棚」だ。思わぬ本と出合う機会が増えたと、客には好評という。

 作家の今村翔吾さんが東京・神田神保町にまもなくオープンするシェア型書店も話題だ。本棚の区画を借りて出店する手法で、個人や企業などによる多彩な活用を期待したい。

 17日にあった斎藤健経産相と書店関係者らの意見交換では、キャッシュレス決済による手数料負担を訴えたり、補助金手続きの簡略化などを求めたりする切実な声が上がった。まずはそうした声を丁寧に拾い上げ、抜本的な支援策につなげることが肝心だ。「ICタグ」の活用で流通の効率化を図るなど、新たな仕組みも後押ししたい。

本は人知の集積でありエンターテインメントである。読書文化、書店文化を守るべく、国は努力を惜しんではならない。

「本は著者がとても苦労して身に付けたことを、たやすく手に入れさせてくれる」とソクラテスも言っている。