書店の減少 大切な文化の拠点を守りたい(2024年4月20日『読売新聞』-「社説」)

 本との出会いの場である書店は、文化の大切な拠点だ。偶然手にした一冊が、自分の世界を広げてくれることもある。時代が移り変わっても、その良さを守っていきたい。

 経済産業省は、減少が続く書店を支援するため、大臣直属の「書店振興プロジェクトチーム」を発足させた。街の書店を「知」の拠点として重視し、維持していくための振興策を検討するという。

 2004年度に約2万店だった書店数は、23年度には約1万1000店に減った。インターネットによる本の販売や電子書籍の普及で書店の業績が悪化したほか、後継者の不足も顕著だとされる。

 地域に書店が一つもない「無書店自治体」の割合は、全国の市区町村の4分の1に上る。このまま手をこまねいていれば、書店のない自治体はさらに増えかねない。深刻な状況だと言えよう。

 斎藤経産相は「いち中小企業の問題ではなく、日本人の教養を高める基盤が全国で激減している」と強い危機感を示している。共感する人も多いだろう。

 経産相と書店関係者らの意見交換の場では、書店側から「キャッシュレス決済が増え、手数料が店の利益を圧迫している」といった声が上がった。書店が抱える様々な課題や要望を丁寧に聞き、効果的な対策を探ってもらいたい。

 書店の支援については、自民党議員連盟が昨年、提言をまとめた。本の流通の効率化や万引きの防止につながる「ICタグ」の導入など、書店のDX(デジタルトランスフォーメーション)化を支援すべきだと訴えた。

 読売新聞が昨年実施した全国世論調査では、自宅から気軽に行ける書店があったほうがよいとする人が75%に上った。本を選ぶきっかけも、「書店の店頭で見て」が最も多かった。

 書店の灯を消さないためには、経産省だけでなく、文部科学省や各自治体も支援に取り組む必要があろう。学校などで、子供たちに読書の楽しさや、多くの本が並ぶ書店の魅力を伝えてほしい。

 店側の経営努力も欠かせない。カフェや雑貨売り場を併設したり、イベントを開催したりする集客努力が求められる。地域色を出すほか、特定ジャンルの品ぞろえを充実させるなど、個性を打ち出すことも重要だろう。

 本は知識や教養を高め、人として成長するのに不可欠な存在だ。幼い頃から読書体験を重ねたい。親子で書店を訪ね、一緒に本を探す時間もきっと楽しいだろう。