休憩中のSNSチェックが「脳疲労」になっているかも!?【正しい脳の休め方】とは(2024年5月6日『VOCE』)

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VOCE

「は~! 頭使いすぎた!」と思ったあなた、次に何をしますか? ベッドにダイブ、いつものようにSNSをチェック……。じつはそれ、脳の疲労回復どころか、余計疲れさせるかも!? 何かと脳を酷使しがちな現代人に贈る、脳疲労の解消法を教えます。

 教えてくれたのは…

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恩蔵絢子(おんぞう・あやこ)さん

脳科学

消えない脳疲労。実は休めていないからかも

仕事や勉強で疲れたら、横になったり、ソファでだらだらして休むことで疲れを癒やそうとしていませんか? 確かに、運動の後は「体が疲れている」のでそれでもいいのですが、脳をたくさん使った後に体だけ休めても、じつは最適な「脳疲労」の解消法とはいえません。

さらに多くの人たちが陥りがちなのが、リフレッシュのためにSNSを覗いたり、ウェブで動画を視聴したりすること。脳に負荷をかけない手軽な息抜き方法のように思えますが、流れてくる情報をぼんやり見ているだけの「受け身の脳の使い方」も、脳を疲れさせる原因です。

脳の資源はモードごとに異なる? 脳疲労とは

仕事や勉強で何時間も集中した日は、脳が疲れている感覚がありますよね。そんな状態のことを「脳疲労」と呼びます。脳疲労が溜まる大きな原因は、「同じことを長時間も続ける」こと。マラソンをすれば、自分の体力やスタミナが徐々に減り、エネルギーを消耗して「もうムリ! 走れない!」という限界がきます。じつは脳も、体力やスタミナのように「資源」が限られているんです。

ただし、脳のすごいところは「モード別」の資源が備わっていること。論理的に考えるときに働く“思考モード”、他者と接するときに働く“感情モード”など、脳は自動的にモード別の資源を使い分けているのです。仕事への集中力が切れた後でも、家に帰れば子どもと楽しく遊んだり、映画を見てワクワクできるのは、脳の中で「モードが切り替わっている」からなんですね。

つまり、1日の中でモードをうまく切り替えることで、より集中力を持続させたり、脳の資源を最大限に有効活用することができるのです。

“正しい”脳の休め方 とにかく没頭!!!

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疲労を解消するには、体を休めたり、SNSや動画を眺めることよりも、格段に有効な方法があります。それはずばり、自分が今やる必要がある仕事や家事に「没頭する」こと。「逆に脳を働かせるのでは!?」と思うかもしれませんが、何か1つのことに没頭しているときは「自分に注目しないで済む」ため、悩みやストレスから解放されて、脳も休むことができるのです。

SNSが脳疲労回復につながらないのは、無意識のうちに「自分に意識が向く」ことが増えるから。いいねの数や投稿内容を誰かと比較したり、発信するときもつい「よく見せよう」という意識が働いてしまいます。さらに通知(音や振動)がしょっちゅう鳴ることで作業が中断してしまい、「注意力」の資源も奪われていきます。

SNSを生活から完全に切り離すのは難しいですが、通知を切ったり、集中するときはスマホを遠くに置くなどの工夫はできるはず。スマホを切って何かに没頭している時間こそ、最強の「脳の休息タイム」といえるかもしれません。

取材・文/金澤英恵 イラスト/日向山葵

Edited by 関野 桃子