本屋さんは街における「知のオアシス」だ。どう守っていくのか知恵を絞りたい。
経済産業省が書店支援策の検討に乗り出した。書店を「文化創造基盤」と位置付ける。まず現場の声を聴いて課題を洗い出す。
出版科学研究所によると書店数は、ここ10年で約3割も減った。2022年9月時点で、全国の自治体のうち4分の1以上が書店ゼロだったという出版文化産業振興財団の調査結果もある。
背景には電子書籍の浸透やネット書店の利用拡大があると指摘される。特にコミックはデジタル化が進み、スマホで読む人が増えている。
とはいえ、本屋さんの存在意義は薄れていない。
駅ナカなどでふらっと立ち寄り、手に取った本から思わぬ発見が得られる。個人の読書志向に応じてお薦めが提案されるネット書店にはない魅力だ。
人々の興味を引く取り組みも広がる。こだわりのある店主が経営する独立系書店は、個性的なラインアップに腐心する。カフェや雑貨店を併設する試みも話題になっている。
個人が書店の棚を借りて本を販売するシェア型書店も注目される。直木賞作家の今村翔吾さんが今月、東京・神田神保町にオープンさせるのもその一つだ。
空白地帯を中心にコンビニに併設するケースも増えている。
自治体の動きもある。青森県八戸市では市営の書店が根付いている。市民の交流や街づくりの拠点としての役割も担う。
日本だけの問題ではない。フランスではネット書店の配送料に最低料金を課す。韓国では公共図書館の本の購入先として地域の書店を優先している。
経産省は、こういった海外の事例も参考にするという。
何より、本を好きな人を増やしていくことが大切だ。
昨年の調査で、高校生の半数近くは1カ月に一冊も本を読んでいなかった。若者が本に親しみやすい環境を整えていく必要がある。書店と図書館が連携して、読書人口を増やす取り組みの検討も始まっている。
本と読書文化を支える仕組みを作ることが求められる。