遮断機のない踏切 事故防ぐ取り組みが急務(2024年4月19日『毎日新聞』-「社説」)

女児が電車にはねられた上信電鉄の踏切=群馬県高崎市で2024年4月6日午後0時39分、日向梓撮影

女児が電車にはねられた上信電鉄の踏切=群馬県高崎市で2024年4月6日午後0時39分、日向梓撮影

 痛ましい事故が繰り返されることがないよう、早急に手立てを講じるべきだ。

 群馬県高崎市上信電鉄の踏切で今月、9歳女児が電車にはねられ、亡くなった。犬を追いかけて進入した可能性がある。

 現場は、警報機も遮断機も設置されていない第4種踏切だった。

 横断者が列車の接近に気づきにくい。手前で止まらず、左右を確認しないまま渡ってしまうリスクもある。いずれも備わっている第1種踏切に比べ、事故が起きる割合が高い。

 第4種踏切は、昨年3月末時点で全国に2408カ所ある。ほとんどがJRと中小私鉄の路線で、地方に多い。

 第1種に変えていくには、費用と時間がかかる。中小の鉄道事業者にとっては負担が重い。

バーを持ち上げて踏切に入る「踏切ゲート-Lite」=岡山市北区のJR西日本岡山支社で2024年1月29日、石川勝巳撮影
バーを持ち上げて踏切に入る「踏切ゲート-Lite」=岡山市北区JR西日本岡山支社で2024年1月29日、石川勝巳撮影

 JR西日本は2021年度から、踏切改良までの暫定的な対応として、簡易型のゲートやバーの設置を進めている。

 歩行者らが自分で押したり、持ち上げたりして、踏切に入る仕組みだ。一旦立ち止まらせることによって、周囲を確認してもらうのが狙いで、実際に効果が出ているという。

 費用は、警報機や遮断機を設置する場合の10分の1程度で済み、数時間で取り付けられる。

 こうした例を参考にして、安全性を高める工夫を凝らしていくべきだ。

 子どもや高齢者が事故に遭うケースが目立つ。学校や地域で注意を呼びかけることも大切である。

 高崎市は市内に21カ所ある第4種踏切について、第1種に改修するなどして、なくす方針を示した。国には、自治体や鉄道事業者を後押しする措置が求められる。

通行者が押して踏切に入る「踏切ゲート」=山口県長門市で2021年2月17日午前10時15分、遠藤雅彦撮影
通行者が押して踏切に入る「踏切ゲート」=山口県長門市で2021年2月17日午前10時15分、遠藤雅彦撮影

 全国の踏切事故は年々減少してきたが、最近は下げ止まり傾向にある。22年度は195件発生し、92人が死亡した。

 最も有効な事故防止策は、踏切をなくすことだ。しかし、線路を横切る道路は、住民の生活に欠かせない場合が多い。鉄道の高架化や、道路との立体交差化は、費用などの面でハードルが高い。

 利便性も考慮しながら、地域で関係者が話し合い、実情に合った安全対策を着実に進めていく必要がある。