嶺南西部の新幹線効果 アピール力磨き誘客図れ(2024年4月8日『福井新聞』-「論説」)

 北陸新幹線県内開業から約半月が経過し、新幹線停車駅周辺や主要観光地はにぎわいをみせている。一方で、終着駅となる敦賀駅から距離がある嶺南西部への波及効果は限定的でこれからだ。一帯は名刹(めいさつ)や風光明媚(ふうこうめいび)な自然に恵まれ、御食国(みけつくに)若狭に象徴する食の魅力度が高い。観光客を誘導するにはさらなるアピール、2次交通への対応が欠かせない。

 北陸新幹線の終着駅となった敦賀駅では、県内開業の3月16日以降、多くの観光客がまちなかにあふれ開業効果の大きさが鮮明となった。敦賀駅西口エリアでみると、土産店商品購入者は開業前と比べ2~3倍、海鮮丼などを提供する飲食店の入店者も土日祝日で10倍、平日も3~4倍に増えたという。敦賀市内の観光地を回る周遊バスも終日ほぼ満席となる日もあったという。

 一方、敦賀駅から直線で30キロ以上離れた小浜市では、観光客が目立って増えているような実感は薄い。市内の観光施設では一部、北陸新幹線で訪れた観光客の姿がみられたものの、開業前と開業後でまちなかのにぎわいは大きくは変わっていない。

 特に指摘されてきた2次交通は課題だろう。JR小浜線の土日ダイヤをみると、1時間に1本程度と決して利便性が高いとはいえない。それを埋める敦賀駅と嶺南西部の各地を結ぶ直通バスも開業日から運行を始めたが、土日祝日でも乗車率が2割前後にとどまるなど認知度アップが必要となっている。

 嶺南西部エリアは明通寺(みょうつうじ)など多くの古刹や蘇洞門、明鏡洞、若州一滴文庫などの観光スポットはいずれも駅から離れている。ただアクセスが難しくても観光客が「訪れたい」と思わせる魅力とポテンシャルは高い。特にかつての都である京都、奈良を支えた御食国若狭の食は多彩だ。若狭かれい、若狭ふぐや若狭ぐじ、小浜よっぱらいサバなど複数のブランド魚に恵まれ、遠くから訪れてでも食したいと思わせる魅力にあふれている。

 また、宿のリニューアルも進み、滞在型観光の魅力アップにも力を入れている。県観光連盟が福井県を訪れた観光客に「誰かに紹介したい」と感じた観光地のランキングには、小浜エリアが上位を占めた。いずれも町屋や旅館を改装し、ワンランク上の宿泊ニーズにも対応したものが目立つ。後はいかに魅力を発信するか。地理的距離があっても「それでも行きたい」と思わせるアピール力が不可欠となる。