医師の負担軽減 医療を持続させるため(2024年4月6日『中日新聞』-「社説」)

 病院などに勤務する医師の過重労働を改善するため、時間外労働を規制する「医師の働き方改革」が4月から実施された。
 医師の負担を軽減しつつも、必要な医療は確保せねばならない。他職種との役割分担や医療機関同士の連携を進めることで、医師が能力を発揮し、医療を持続的に提供できる就労環境を整えたい。
 働き方改革関連法は2019年に施行されたが、医師については人材確保が難しい地域医療への影響が大きいとして5年の猶予期間が設けられていた。
 同法が医師にも適用されることで、勤務医の時間外・休日労働は原則年960時間までに規制される。違反には罰則があるが、救急医療やへき地医療を担う医師らと研修医らの上限は年1860時間とする特例が設けられている。
 上限が設けられたとはいえ、一般の年720時間よりは長く、長時間労働による過労死などの懸念は残る。医師の負担を軽減するにはさまざまな施策が必要だ。
 医師とともに医療を支えるほかの職種との役割分担「タスクシフト」は有効な対策になり得る。1人の患者を複数の医師が担当する複数主治医制▽人工呼吸器管理などの一部業務を担う看護師の増員▽カルテ入力を代行する医療クラーク配置-などを進めたい。
 役割分担が広がれば、雑務も担う若手医師の負担は大幅に減る。家庭生活との両立ができれば、女性医師の活躍の場も増える。働き方改革サービス残業が増えれば本末転倒だ。医療機関働き方改革を着実に進めてほしい。
 働き方改革に伴い、医師の確保に支障が生じて診療体制が縮小するなど、地域や診療科によっては悪影響も懸念される。医療の質を確保するには、地域や診療科による医師偏在への対策も急務だ。
 地域内で役割が似た病院の統合など、医療機関が連携して地域のニーズに合った医療提供体制を整備することも欠かせない。
 共同通信が病院を対象に、制度以外に必要な施策を尋ねたところ(複数回答)、国民への啓発活動(75・4%)、軽症患者が休日や夜間に救急外来を自己都合で受診するコンビニ受診を控える(52・6%)など、利用者に理解を求める回答が目立った。
 勤務医の負担軽減には、病院に行く前にかかりつけ医に相談するなど患者側の心構えも大切だ。