医師の働き方 医療の質落とさぬ改善を(2024年3月29日『新潟日報』-「社説」)

 長時間労働が常態化している医師の働く環境を改善しなくてはならない。地域医療の質を落とすことがないように、医師の確保に一層力を入れる必要がある。

 病院などで働く医師の労働時間に4月から上限規制が適用され、時間外・休日労働が罰則付きで原則年960時間に制限される。

 2019年度に始まった「働き方改革関連法」に伴う規制で、医師への適用は5年間猶予された。

 この間、各病院は医師の負担軽減を進めてきた。業務の一部を看護師や技師らと分担する「タスクシフト・シェア」や、情報通信技術(ICT)の活用による業務の効率化や省力化、事務作業補助者の配置などだ。

 これらの取り組みで、全国的に医師の労働時間は改善傾向にある。厚生労働省によると、960時間以上残業する勤務医の割合は、19年の調査で約4割だったが、22年は約2割に改善した。

 しかしまだ十分ではない。新潟日報社が1~2月に県内の病院を対象に実施したアンケートでは、回答した77病院のうち、22年度末時点で10病院が年960時間を超えた医師がいたと回答した。

 目安である年960時間は「過労死ライン」と同水準で、一般労働者の原則年360時間、最長年720時間との差は大きい。

 規制では、救急医療や高度技能の習得などを求められる病院は、申請が認められれば、特例で年1860時間まで許容される。

 上限を超えざるを得ないとして県内では新潟大医歯学総合病院など4病院が特例を申請した。

 ただ、特例が認められても、他の病院で兼業する医師がいる場合、残業時間を合算する必要があり、特例の上限を超えてしまう可能性があるという。

 県内病院へのアンケートでは、働き方改革がもたらす地域医療への影響について、51病院が「救急医療の逼迫(ひっぱく)を懸念」、25病院が「手術を受ける患者の待機時間(日数)の長期化」と答えた。患者側へのしわ寄せが懸念される。

 問題なのは、本県の医師不足が深刻なことだ。医師の充足度を示す指標は全国45位と低い。

 少ない医師が現場を支えている現状がある。さらなる地域医療の縮小や医師の偏在は避けなければならない。それには医師数を増やす取り組みが不可欠だ。

 県内で働く医師の確保を目的とした大学医学部の「地域枠」拡大などで、研修医が増加傾向にあるなど、明るい兆しも見られる。

 医師を目指す人を増やすには、軽度な業務を想定し、労働時間に含まれない「宿日直許可」や、学習や研究といった「自己研さん」とみなされる曖昧な働き方を変えていくことも必要だろう。

 医師の負担軽減には、緊急性のない時間外受診を避けるなど、患者側の理解も欠かせない。