(2024年4月2日『山形新聞』-「談話室」)

▼▽昨今の政界動向で専ら耳目を集めるのは、自民党の派閥裏金事件だろう。国会議員に還流したカネがどう使われたのかよく分からない、おまけに税金もかからないというのなら、国民に怒りが渦巻くのは当然のことだ。

▼▽ただし、看過できないことは他にもある。杉田水脈(みお)衆院議員(自民)のSNS投稿や発言である。アイヌ民族在日コリアンへの差別的言動を巡って、札幌と大阪の法務局が人権侵犯と認定したのは昨年のことだった。しかし、その後も偏見をあおるような物言いを続ける。

▼▽今度は法務省有識者会議にかみついた。「極左活動家を入れているようでは絶対にダメ。公安の協力を得て、締め出せ」。離婚後の共同親権導入に対して慎重な委員を念頭に批判している。とはいえ「締め出せ」は容認できない。公然と言論統制を求めた形になるからだ。

▼▽「人の心の痛みを想像することが差別をなくす第一歩」「排除ではなくお互いに理解し合う」。ヘイトスピーチ解消に向けた法務省の冊子に、こんな言葉があった。自らの考えだけが正しいと凝り固まらず、議論を尽くして落ち着く先を見いだすのが民主主義の要諦である。