「一切関与していない」と繰り返すだけでは不誠実だ。説明責任を果たすには、国会で真相を明らかにする必要がある。
自民党の派閥が政治資金パーティー収入の一部を所属議員に還流し、政治資金収支報告書に記載しなかった裏金事件である。安倍派幹部6人が衆参の政治倫理審査会に臨んだが、いつどのように始まり、なぜやめられなかったのか、疑問は解消されなかった。
「還流の継続でしょうがないかな」という話になったと塩谷氏が述べた一方、他の3氏は「結論は出なかった」と主張した。政治家が誰も決めていないのに、廃止方針が覆るのは不自然極まりない。
そもそも、問題があるから安倍氏は還流廃止を決めたのではないか。だが、「違法性は議論にならなかった」と幹部は口をそろえた。下村氏は今年1月の記者会見で「合法的な形で表に出す案があった」と言及していたが、政倫審では誰が提案したか「覚えていない」と繰り返した。
いずれも派閥や自身の報告書に不記載があったことは「昨秋の報道で初めて知った」と弁明した。派閥の内情に通じているはずなのに、責任逃れにしか聞こえない。
幹部が「知らない」と言い張るなら、対象者を広げて証言を求めるしかない。裏金作りには衆参82人が関わり、各派の事務局長が実際に資金を管理していた。
中でも鍵を握るのが森喜朗元首相だ。裏金作りが始まったとされる二十数年前の派閥会長で、今も安倍派に影響力があるとされる。国会に招致して話を聞くべきだ。
野党各党は安倍派幹部らに対し、偽証罪が適用される証人喚問を求めている。本気で解明に取り組むつもりなら、自民は拒否できないはずだ。
岸田文雄首相は先送りしていた関係議員の処分を、4月上旬にも決めるという。疑惑をうやむやにしたまま幕引きを図るようでは、国民の不信が深まる一方だ。