おたま1000種類! 利用者目線でこだわり商品を 台東区かっぱ橋道具街の調理用品販売業「飯田」(2024年3月25日『東京新聞』)

 
<東京・首都圏 光る中小企業~しんきん優良企業>
 東京を中心に首都圏にはキラリと光る技術やサービス、優れた経営力のある中小企業がたくさんあります。2023年度しんきん優良企業(東京都信用金庫協会など主催)に選ばれた主な企業を随時紹介します。
 
売れ筋の0.1ccから2000ccまでそろうレードルを紹介する飯田の社長、飯田結太さん=東京都台東区で

売れ筋の0.1ccから2000ccまでそろうレードルを紹介する飯田の社長、飯田結太さん=東京都台東区

 浅草のかっぱ橋道具街の中心部にある飯田屋(東京都台東区)の店頭に並ぶ料理道具は8500種類。消費者や調理人、外国人観光客が道具の森をかき分けるように買い物をする。数年に1個しか売れない商品もあるというが、「これが欲しかった!」と喜ぶお客さんの顔を見るのは専門店の冥利(みょうり)。飯田の社長、飯田結太さん(39)は「在庫回転率よりも在庫”仰天”率を重視している」と笑う。

◆「あと1㏄」に応える

 「飯田屋レードル」と名付けたおたまは、0.1㏄から2000㏄まであり、柄の形や長さ、左利き用などさまざまだ。「あと1㏄少ないのはない?」というお客さんの要望に応えるうちに1000種類をそろえるようになった。飯田さんは「量ることが料理の基本。量る道具への熱量で店の本気度が分かる」と話す。
 大学在学中から友人と立ち上げた会社で働いていた飯田さんは、リーマン・ショック後の飲食店不況に苦しんでいた家業を助けたいと2009年に飯田に入社。ある日、おろし金を買いに来た人に「食感が柔らかくなるのはどれ」と聞かれたが、説明できなかった。職人に相談すると「使い比べるのはお宅の仕事だろう」と言われた。おろし金を試してみると、大根おろしの味が全く違った。「道具に個性があることを初めて知った」という。利用者目線の商品選びや開発にこだわるようになった原点だ。

◆「フワフワ」「シャキシャキ」職人と切れ味研究

 高級包丁と同じ鋼材を使用した「エバーピーラー」は、角度を1度ずつ変えた試作品で皮をむきやすい角度を研究し尽くした。刃物で有名な岐阜県関市の職人とともに作り上げた商品で、キャベツの千切り用や野菜の皮むき用など100種類。スライサーはキャベツをフワフワに切れるタイプとシャキシャキ感を残せるものなどがある。
 職人の手でつくるために量産は難しいが、「職人と連携して飯田屋ならではのアイテムをつくり、海外でも使ってもらいたい」と意気込む。(白山泉)

 企業データ ▽従業員数=10人(パート含む)▽売上高=約6億円▽創業=1912年▽所在地=東京都台東区西浅草2の21の6▽飯田結太社長のひと言=ピッタリと合う料理道具を届け、目の前のお客さまを幸せにする。