<東京・首都圏 光る中小企業~しんきん優良企業>
東京を中心に首都圏にはキラリと光る技術やサービス、優れた経営力のある中小企業がたくさんあります。2023年度しんきん優良企業(東京都信用金庫協会など主催)に選ばれた主な企業を随時紹介します。
◆「調査や設計から対策の提案まで全て手がける」が強み
空撮、調査、測量などに使用するドローンを前に事業内容について話す水域ネットワーク社長の荒川洋さん=東京都江戸川区で
「私たちは波や風のプロ。島国ならではの日本の課題に、技術力で解決策を提示したい」。水域ネットワークの荒川洋(ひろし)社長(59)は力を込める。海岸域の調査や構造物の設計、水害のシミュレーションなど幅広い仕事を担う。
海で発生する波の向きや高さ、潮流の力や働きなどは刻々と変わる。海岸に防波堤などを造る際は、工事を前にさまざまな観測や解析が必要だ。同社は国や自治体の港湾整備や防災事業を受注したゼネコン、大手建設コンサルタントから仕事を請け負う。
港湾の施設は老朽化が進み、多くが維持管理や修繕の対応を迫られている。同社は、改良を加えた専用ドローンで海岸や港湾を空撮。調査によって得た港の形や水深のデータなどを、京都大と共同で開発したソフトで解析し、津波や高波、洪水の具体的な被害規模などを予測する。「東日本大震災以降は、津波の影響調査の仕事が増えてきた」と荒川さん。データは自然災害対策やコンサルタント業務にも活用する。
「同じ下請け会社でも、調査や設計から対策の提案まで全て手がけるところはほとんどなく、強みの一つ。かゆいところに手が届くよう100%以上の仕事をするよう心掛けている」
◆海から「風」へ 売り上げも伸長
従来の「海」に加えて「風」の事業にも力を入れている。
2004年から東京大と共同研究を進め、日本の複雑な地形で風況を解析するソフトを開発した。風速や風の向きの解析は風力発電の発電量予測や設備設計の上で欠かせない。海に囲まれた日本にとって、洋上風力発電は再生可能エネルギー拡大の切り札とされる。再エネを活用し、温室効果ガスの排出を実質ゼロにする政府の「2050年カーボンニュートラル宣言」はまさに追い風だ。
今では風関連が売り上げ全体の3〜4割を占めるという。「今後もニーズは高まる。若い人たちにも仕事の奥深さと面白みを伝えたい」(砂本紅年)