社員教育に1人年50万円「人の成長が会社の未来」 東京・羽村の変圧器メーカー「NISSYO」(2024年3月27日『東京新聞』)

 
<東京・首都圏 光る中小企業~しんきん優良企業>
 東京を中心に首都圏にはキラリと光る技術やサービス、優れた経営力のある中小企業がたくさんあります。2023年度しんきん優良企業(東京都信用金庫協会など主催)に選ばれた主な企業を随時紹介します。
 
従業員たちと笑顔を見せるNISSYO社長の久保寛一さん(右から2人目)=東京都羽村市で

従業員たちと笑顔を見せるNISSYO社長の久保寛一さん(右から2人目)=東京都羽村市

◆「社長だけが勉強しても会社は変わらない」

 電圧を変える変圧器の設計、製造、販売を手がける「NISSYO」(にっしょう、東京都羽村市)社長の久保寛一(かんいち)さん(67)は、自身と社員の教育に力を注ぎ、社内のデジタル化を進めてきた。事業効率や生産性が見違えるように上がり、2003年6月期に約2億2000万円だった売上高は、20年で約15倍の約32億4000万円に拡大。「人の成長なくして会社の成長はない」と断言する。
 下請けをしていた大手変圧器メーカーが倒産、1989年ごろから変圧器の設計も始めた。久保さんは93年に父から事業を承継。ただ98年には「自分の給料が1年払えないくらい厳しかった」と振り返る。
 必死に存続を図りつつ、ある経営者に「勉強をしていない」と指摘されたのを機に、中小企業の支援に取り組む実業家の小山昇さんに師事。経営を基本から学び始めた。「社長だけが勉強しても変わらない」と、社外研修や海外視察など社員教育にも注力。今も社員1人当たり年約50万円の教育費をかける。

◆社員数超すタブレット導入、デジタル推進で業務効率化

 2008年からは、企業理念や今後5年間の事業計画、クレームへの対応法などを詳細に記した経営計画書を作成。毎年内容を見直し、取引先の金融機関を招いた発表会で説明する。
 少量多品種に特化して売り上げも伸ばすが、危機感は強い。「敵はライバル会社ではなく時代」。15年からタブレット端末を導入し、デジタル化を進める。初年は55台だったが、現在は従業員数を上回る252台に。従業員それぞれが不良率や業務負荷状況など200以上のグラフデータを確認できる。業務効率化はもちろん、設計図など年間60万枚の紙削減にもつなげた。
 デジタル化の取り組みを全国の経営者に見せるビジネスも始めた。「会社の未来は社員教育社員教育を続けないと会社は伸びない」(畑間香織)

 企業データ ▽従業員数=177人▽売上高=約32億4000万円▽創立=1967年▽所在地=東京都羽村市神明台4の5の17▽久保寛一社長のひと言=学び続ければ人生は無限。