ガザの人道危機 いつになれば停戦できるのか(2024年3月17日『読売新聞』-「社説」

 イスラエルイスラム主義組織ハマスの戦闘は5か月以上に及び、停戦交渉も頓挫している。パレスチナ自治区ガザの人道危機が深まる現状を放置してはならない。

 国連によると、ガザの住民約220万人のうち、4分の1にあたる約58万人が、「 飢饉ききん 寸前」の状態に陥っている。

 米国は、ガザ上空で、小麦粉や缶詰などの食料を航空機から投下する支援を始めた。海路での食料の搬入も進めるという。空・海からの支援は苦肉の策と言える。

 大量の食料を住民に届けるなら、陸路が最も適している。それができないのは、イスラエルが、ガザとエジプトをつなぐ幹線道路を使った食料などの搬入を、検問所でほぼ止めているからだ。

 また、ガザに食料が届いても、イスラエルの攻撃が連日続いているため、国連職員らによる住民への配給活動も停滞している。

 こうした状態が続き、住民の餓死や栄養失調が急増した場合、イスラエルの責任は免れない。

 人道危機に歯止めをかけるには、早期停戦が不可欠だ。イスラエルハマスは、イスラム教のラマダン(断食月)が今月中旬に始まるのを機に、戦闘休止で合意することを目指して協議していたが、交渉は暗礁に乗り上げた。

 合意案は、6週間の戦闘休止と、ハマスイスラエルから連れ去った人質の解放を柱としていた。戦闘休止期間の延長を重ねて恒久的停戦につなげることが期待されていたが、決着しなかった。

 その責任は双方にある。ハマス側は、イスラエル軍のガザ撤退と恒久的停戦を強硬に求めたという。だが、ハマスがガザを統治し、イスラエルへのテロ攻撃の温床となる体制が続く限り、ガザに平和と安定は訪れない。

 一方、イスラエルのネタニヤフ首相は 頑かたく なに停戦を拒んでいる。米国などの自制要求にもかかわらず、約150万人が避難しているガザ南部ラファにまで攻撃範囲を広げる構えも見せている。

 ネタニヤフ政権は、パレスチナに対して強硬な極右政党と連立を組んでいることもあり、譲歩しにくい事情もあるとされている。

 ネタニヤフ氏が目指す「ハマス壊滅」は、何をもって達成できるのか。それを明示しないまま、自衛の範囲を超えるガザ攻撃を続けていては、イスラエル国民の支持も、国際社会の理解も得られず、孤立が深まるだけだろう。

 米国などは停戦への働きかけを一層強めねばならない