SNS犯罪 スマホでの甘言に潜む悪意(2024年3月17日『読売新聞』-「社説」)

 スマートフォンで知り合った見ず知らずの相手に誘われ、犯罪の被害に遭う人が増えている。特に、お金と性的な要求には注意が必要だ。

 SNSを介して相手に恋愛感情を抱かせ、現金をだまし取る「ロマンス詐欺」の被害が、昨年は1575件、計177億円に上ったと、警察庁が発表した。

 犯人は、婚活で使われるマッチングアプリやSNSを使い、外国人や海外在住の日本人を装って接触してくる。結婚をほのめかすようなやりとりを重ね、「一緒に暮らすためにお金がいる」などと送金させるケースが目立つ。

 被害者は相手を信頼して、だまされていることに気づきにくい。不審に思っても、恋愛が絡むため家族にも相談しづらいという。

 恋心や羞恥心につけ込む悪質な手口だと言えよう。表に出ている被害は氷山の一角に違いない。

 投資家を名乗り、「確率の高い資産運用がある」とSNSで持ちかけて、金を振り込ませる手口も多い。こうした「SNS型投資詐欺」の被害総額は昨年、2271件、278億円だった。

 いずれも、中高年の男女が長期にわたり何度も現金をだまし取られるのが特徴だ。1件当たりの平均被害額は1200万円に上る。この二つの被害額を合わせると、振り込め詐欺など特殊詐欺の441億円を上回る。

 スマホ一つで他人とつながることができるSNSは、外出自粛が続いたコロナ禍で社会に広く浸透した。結婚した男女の2割がマッチングアプリで出会う時代だ。身元を隠して近付いてくる悪意につけ込まれないようにしたい。

 見知らぬ人から甘い言葉やもうけ話が突然届いた場合、返信すること自体が危険だ。相手に好意を持ったとしても、送金を要求してきた時点で、詐欺を疑い、警察に相談すべきだろう。

 事件には国際的な詐欺グループが関与しているとの見方がある。警察は、海外の捜査機関とも連携を深めることが欠かせない。

 送金のために銀行を訪れた被害者の、不自然な行動に職員が気づき、未然に防いだケースもある。金融機関は、被害の防止や啓発の取り組みを強化してほしい。

 SNSを通じて裸の画像を送信させられるなど、子供が性犯罪に巻き込まれる事件も増えている。スマホ使用の低年齢化を背景に、小学生の被害が目立っている。

 SNS上には危険が潜んでいることを学校や家庭で教え、使用のルールを決めることが重要だ。