オスプレイ飛行再開(2024年3月16日『宮崎日日新聞』-「社説」)

◆不安解消されず拙速過ぎる◆

 在日米軍は昨年11月に鹿児島県・屋久島沖で起きた墜落事故を受けて停止していた輸送機オスプレイの飛行を再開した。米軍は事故を受けて全軍で飛行を停止していたが、事故の際に発生した機器の故障を特定し、構造上の欠陥はなかったとして飛行再開を決めた。

 米空軍特殊作戦司令部のこれまでの発表では、機器に故障が起きた原因自体はまだ不明で、分析を継続中だとしている。搭乗員8人が死亡するという日本国内で初めてのオスプレイの死亡事故は、屋久島沖の海上で起きた。故障原因が不明のままオスプレイの飛行を再開するのでは、基地周辺や飛来地域の住民の不安は募るばかりだ。再開は拙速過ぎる。

 オスプレイはヘリコプターのように垂直離着陸が可能で、さらに上空で主翼の角度を変えて固定翼機のように飛行できる特殊な構造が特徴だ。事故率が特段高いわけでもないとも説明されるが、2016年には普天間飛行場(沖縄)所属の海兵隊仕様のMV22が不時着して大破。昨年8月にはオーストラリアでMV22が墜落し、3人が死亡するなど事故が相次いでいる。

 屋久島沖で事故を起こしたのは横田基地(東京)所属の空軍仕様のCV22で、飛行中に火を噴くところが目撃されるなど、空中で制御不能になったとみられる。日本国内では、横田基地のほか、普天間飛行場にMV22が配備されている。自衛隊陸自仕様のV22を木更津駐屯地(千葉)に暫定配備している。

 米軍は日本国内での事故を受け、昨年12月から全軍で飛行を停止していた。原因が解明されない段階で飛行を再開するのは、停止期間が長期に及んでおり、操縦士の練度がこれ以上低下するのを恐れるためだろう。だが、それよりも重視すべきなのは、住民の安全であることは言うまでもない。

 日米地位協定などに基づき、日本政府には米軍の飛行再開を停止する権限はない。だが、日米同盟が国民の信頼に基盤を置く以上、国民が納得する形でなければ再開は認められない。

 事故直後、沖縄県玉城デニー知事は「事故原因究明まで飛行停止を求める」と発言した。しかし、岸田文雄首相は腰が引けた対応をとり、飛行停止の申し入れまでに時間がかかった。玉城知事は、普天間飛行場移設問題を含め、国が地元意向を軽んじていないかと記者団から問われ、「沖縄ではそれが許されると思っているとしたら大間違いだ」と憤怒をあらわにした。

 米側の方針に一方的に従うのではなく、国民の不安を取り除く対応が日米両政府に求められる。地元の信頼を取り戻さなければ同盟の基盤が損なわれる。