オスプレイ停止解除に関する社説・コラム(2024年3月13日)

普天間飛行場に駐機するオスプレイ。操縦席の窓にはカバーがかけられていた=沖縄県宜野湾市で2024年3月9日午前10時49分、喜屋武真之介撮影

普天間飛行場に駐機するオスプレイ。操縦席の窓にはカバーがかけられていた=沖縄県宜野湾市で2024年3月9日午前10時49分、毎日新聞喜屋武真之介撮影

オスプレイ再開 究明なき飛行許されぬ(2024年3月13日『北海道新聞』-「社説」

 米軍は、昨年11月に鹿児島県屋久島沖で起きた墜落事故の後、全世界で講じたオスプレイの飛行停止措置を解除すると発表した。
 これを受け防衛省は「原因が特定され、安全に再開できることが確認できた」と強調した。関係自治体に説明後、陸上自衛隊オスプレイの運用も再開するという。
 ところが事故原因となる不具合を起こした部位やその内容の説明は一切ない。点検や整備の頻度を上げると言うが、それだけで安全が確保できるのかも疑問だ。
 防衛省は詳細を明かせないのは「米軍の調査が継続しているため」と弁明する。その段階でなぜ安全と断言できるのか。根本的な原因を究明できたと言えるのか。不透明な点が多すぎる。
 民間の事故であれば、第三者による科学的な検証を徹底し、その結果を踏まえて再発防止策を公表するのが当たり前だ。
 軍の機密を盾に説明責任を果たさぬまま飛行を再開するのは許されない。今回の判断は明らかに拙速だ。日米は撤回すべきである。
 木原稔防衛相は「(米側から)これまでにないレベルで詳細に報告を受けた。私自身、合理的だと納得した」と述べた。
 しかし肝心の部分を伏せた状態でそう強調されても何がどう合理的なのか、さっぱり分からない。
 米側の意向で具体的に明かせないと言うが、これは日本国内で起きた事故だ。政府の担当閣僚がその程度の説明で構わないと考えているなら無責任にも程がある。
 日本の関与が乏しい背景には、調査が日米地位協定に基づき米国主体で行われた事情がある。
 これを仕方ないととらえ、ただ米国に追随するのであれば、事故に脅かされる国民の命と安全は守れまい。政府は地位協定の改定に真剣に取り組むべきだ。
 オスプレイは開発段階から欠陥が指摘され、世界中で多くの事故を起こしてきた。事故で亡くなった兵士は50人以上に上る。
 防衛省は、今回の日米のやりとりの結果、機体の構造に欠陥はないと判断したというが、疑問の声は米国内でも高まっている。
 世界のオスプレイ輸入国は日本だけだ。もっと自国の問題として危機感を強める必要がある。
 オスプレイは道内にも、日米共同訓練で頻繁に飛来している。
 岸田文雄首相は、国民の中に渦巻く不安や疑問をしっかり認識すべきだ。危険を排除できないのなら、国内のオスプレイは全て撤去すべきである。

オスプレイ飛行再開 事故原因見えず拙速だ(2024年3月13日『秋田魁新報』-「社説」)

 米軍は輸送機オスプレイの飛行停止措置を解除した。昨年11月に米軍横田基地(東京都)所属機が鹿児島県・屋久島沖に墜落し、搭乗していた8人全員が死亡した事故を受け、全てのオスプレイが飛行停止となっていた。今後準備を進め、順次飛行を再開するとしている。

 防衛省は「原因が特定され、安全に再開できることが確認できた」としているが、原因となったとみられる部品の不具合の詳細については「米軍の事故調査が継続しているため、明らかにすることができない」と明言を避けた。これでは安全が確保できたことにはならない。

 米軍が飛行を再開するというのであれば、事故調査によって原因の詳細を明らかにし、再発防止の対策を十分に講じておかなくてはならない。それが見えない現時点での飛行再開は国民の不安が拭えず、拙速と言わざるを得ない。

 事故機は米軍横田基地所属の空軍仕様のオスプレイCV22。山口県岩国基地から沖縄県の嘉手納基地に向かう途中で屋久島沖に墜落した。市街地などに墜落していれば、多くの住民が巻き添えになる可能性があった。

 日本政府は国民の生命を守る立場から、米軍に対して毅然(きぜん)とした姿勢で臨む必要がある。

 オスプレイは日本国内では、米軍が横田基地にCV22を6機(今回の事故機含む)、沖縄県普天間飛行場海兵隊仕様のMV22を24機配備した。陸上自衛隊もV22を17機導入する予定で、このうち14機が千葉県の木更津駐屯地に暫定配備されているが、いずれは佐賀県に建設中の佐賀駐屯地(仮称)に移される計画だ。

 防衛省は安全対策として、異常探知システムによる点検と整備の頻度を上げることなどを決めたが、弥縫(びほう)策に過ぎない。飛行再開については米軍の事故調査結果を十分に見極めた上で判断してほしい。

 基地や配備予定地周辺の住民は特に不安だろう。木原稔防衛相は米軍と陸自オスプレイの具体的な飛行再開時期について「今後日米間で調整を進める」としている。その際は関係自治体の理解を得ることが大切だ。

 オスプレイは開発段階から事故が絶えず問題視されてきた。日本では普天間飛行場に配備された1機が2016年に空中給油訓練中にトラブルを起こし、沖縄県沿岸に不時着して大破する事故が発生したが、米軍は1週間もたたないうちに飛行を再開させて批判を浴びた。その後海外でも墜落事故が相次ぐなどオスプレイの安全性に対する懸念が増大する中で、今回の事故が起きた。

 沖縄県などから今回の飛行再開に「納得できない」と不満を訴える声が上がっているのは当然だ。住民に被害が出てしまっては取り返しがつかない。日本政府には、安全を最優先に考えた慎重な対応が求められる。


オスプレイ停止解除 市民の安全が置き去りだ(2024年3月13日『毎日新聞』-「社説」)

 事故の根本的な原因がわからないまま、飛行再開に向けて動き出す。日米両政府の判断は、到底受け入れられるものではない。

 米軍が、世界各地で続けていた輸送機オスプレイの運用停止を、約3カ月ぶりに解除した。鹿児島県・屋久島沖での昨年11月の墜落事故を受けて、飛行を止めていた。国内については、関係自治体に説明した上で、日米で調整して具体的な再開時期を決めるという。

 だが、両政府の説明では、安全性への懸念は払拭(ふっしょく)されず、むしろ不安は高まるばかりだ。

 事故原因は「特定の部品の不具合」というが、どんな部品か、どういう状況か、詳しくは明らかにされていない。不具合は他の機体でも起きる可能性があるという。にもかかわらず「設計と構造に問題はない」と結論づけている。

 今後は、異常探知システムによる予防的点検と、メンテナンスの頻度を増やすといった対策をとることで、異常を早く把握し、安全性を確保できるという。

 異常が起きることを前提に、早期発見すれば安全だという理屈だ。納得できる人がいるだろうか。

 防衛省は「事故の根本的な原因はわかっていないが、対策を打つほどには、だいたいは、わかっている」と説明する。詳細を明かさないのは、米軍の調査が継続中で、報告書の公表までは「米国内法上の制限」があるからだという。

 米側の主張を唯々諾々と受け入れ、とにかく安全なのだから信用するように、と国民に言っているようなものだ。

 米軍は470機以上のオスプレイ保有する。墜落事故は、この2年間だけで、世界各地で今回を含めて4件発生している。

 米議会下院の監視・説明責任委員会のコマー委員長が、安全性を懸念する声明を出すなど、米国内でも不安の声が上がっている。

 機動力に優れ航続距離も長いオスプレイは、南西諸島防衛での隊員輸送への活用などに、日米当局の期待が高い。だが、運用を優先し、市民の安全を置き去りにするようでは、日米同盟の信頼性をかえって損ないかねない。

 原因究明を徹底した上で、全容を国民に説明し、抜本的な安全対策を講じる必要がある。それまでは、飛行を再開すべきではない。

 

オスプレイ再開へ説明 見切り発進許されない(2024年3月13日『沖縄タイムス』-「社説」)

 オスプレイの飛行停止措置を解除する米軍の方針について、防衛省は県など関係自治体への説明を始めた。 世界中で事故が相次ぎ、米国内で遺族から訴訟を起こされる可能性があるなどの理由から、米側に気遣う形で十分な説明はなかったという。

 沖縄側は「不安を解消できない」「納得できるものではない」と口をそろえた。

 防衛省は説明を重ねる意向だが、米軍の飛行再開に地元の合意や理解が必要かどうかの明言を避けている。見切り発進は断じて許されない。

 防衛省によると、米側は昨年11月の鹿児島県屋久島沖でのオスプレイ墜落事故は「特定の部品の不具合」で生じたと結論付けた。自衛隊による技術的な検証を加え、防衛省は「安全に飛行再開できる」との認識に立っている。

 県側への説明では、特定の部品とは何か、なぜ不具合が生じたのか、など具体的な事故原因を明かさなかった。

 それどころか、防衛省側がどれだけの情報を把握しているのか、も伝えていない。

 説明を受けた県の担当者が「日本側が主体的に判断したとは到底思えない」と感じるのも無理はない。

 「詳しくは言えないが、私たちは納得できたから、皆さんも納得してほしい」という態度は、極めて不誠実だ。

 米側が提示したオスプレイの飛行や運用を再開するまでの3段階のプロセスも、事故原因が分からないだけに安全性の担保としての実効性を判断できない。知りたい情報とかけ離れている。受け入れる余地がないのは当然である。

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 オスプレイの墜落事故は、この2年間だけで4件発生し、計20人が命を失った。

 遺族が米軍や国防総省の責任を追及するなど社会問題になる中で、事故原因の説明がないままの飛行再開には米国内でも批判が高まっている。

 米軍は約430機のオスプレイを所有する。

 米軍幹部はシミュレーターや他の航空機での代替訓練には限界があると指摘。飛行停止が始まった3カ月前の状態に戻るには3カ月以上かかるとの見方を示すなど、早期の飛行再開が不可欠との考え方を強調している。

 運用上の必要性を優先し、安全がないがしろにされるのではないか、との懸念を拭えない。

 飛行再開を既定路線とするのであれば、防衛省の説明も単なるポーズに過ぎない。

 オスプレイは日本全国を飛行する。防衛省には当事者として向き合う姿勢が必要だ。

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 防衛省は、米側の事故調査報告書が公開されるまで、米国内法上の制限があるため「対外的に詳細を明らかにできない」と主張している。

 米側が報告書を公開してもその範囲の説明にとどまることは容易に想像できる。受け身であり、主体性が見えないと言わざるを得ない。

 事故を防げない欠陥機が、またわれわれの暮らしのそばを飛ぶのだろうか。不安は増大するばかりである。

 詳細な事故原因と実効性のある再発防止策が示されないままのオスプレイの飛行再開は認められない。

 

オスプレイ飛行再開(2024年3月13日『しんぶん赤旗』-「主張」)

 

墜落原因伏せ強行とは異常だ
 墜落死亡事故を繰り返し「空飛ぶ棺おけ」とも呼ばれる危険な航空機が、事故原因を伏せたまま飛行を再開していいのか―。米軍は、昨年11月に米空軍の垂直離着陸機オスプレイが鹿児島県屋久島沖に墜落した事故を受けて実施していたオスプレイ全機種の飛行停止措置を解除しました。岸田文雄政権はこれを追認し、自衛隊オスプレイの運用も再開しようとしています。しかし、日米とも、事故の原因としている「特定の部品の不具合」について何一つ詳しく説明していません。国民や関係自治体の理解が得られるはずはありません。

米軍の意向を最優先
 米軍は8日、オスプレイの飛行停止措置の解除について「部品の不具合に対処し、安全な飛行再開を可能にするため、整備と手順の変更が実施された。米海軍、海兵隊、空軍は各軍の具体的なガイドラインに従って、それぞれ飛行再開計画を実施する」とだけ発表しました。具体的な部品名や、なぜ不具合が起こり、どのように墜落につながったのかなど、肝心の点は全く明らかにされていません。

 米国からの報道によると、米軍の担当者は「今回の特定の部品の故障は初めて」と述べています。一方で、飛行再開に当たり機材の改修は行わないとしています。飛行再開に際して実施されるのは「整備と手順の変更」だけです。

 防衛省によると、具体的には、異常探知システムによる予防的点検や維持整備の頻度の増加などの安全対策を講じるとしています。

 同省は「設計と構造に問題はない」と強調しますが、事故原因となった部品は全機種共通のものとしているのに、なぜそう断言できるのか、安全対策を取るだけで本当に飛行の安全が確保できるのかは検証しようがありません。

 重大なのは、米軍の意向に従い、防衛省も事故原因の詳細を隠していることです。

 木原稔防衛相は9日の臨時記者会見で「米側からは、事故の状況や原因、安全対策について、前例のないレベルで詳細な情報提供を受けて」いると述べ、米軍の判断は「合理的」と評価しました。一方で、「詳細な情報」を明らかにしない理由として「米国内法の制限」を挙げ、「大きな事故だから米国内で訴訟などの可能性もあることから(事故調査報告書の公表まで)つまびらかにすることはなかなかできない」と言い訳しました。

 しかし、墜落事故は日本国内で発生しており、日本の主権と国民の生命と安全にかかわる重大問題です。米国内法や訴訟という米軍の都合を唯々諾々と受け入れることは許されません。

日本からの撤去こそ
 木原防衛相はまた、飛行再開を急ぐ理由について「米側の事情もある」とし、「在日米軍だから島しょ防衛、あるいは日本の安全保障に資するためにオスプレイを運用していく必要性がある」と述べました。ここにも、米軍最優先で国民の理解を後回しにする姿勢があらわです。「日本の安全」を言うなら飛行させないことです。

 防衛省は関係自治体への説明後に飛行再開を強行する構えです。しかし、具体的な事故原因さえ示さず安全性への懸念を払拭するのは不可能です。オスプレイはこれまでも深刻な事故につながるさまざまな欠陥が指摘されています。日本からの撤去こそ必要です。