オスプレイ飛行再開 に関する社説・コラム(2024年3月15日)

オスプレイ飛行再開 原因説明なき運用許されぬ(2024年3月15日『中国新聞』-「社説」)

 

 事故の根本原因が分かっていないのに、在日米軍がきのう、国内に配備する垂直離着陸輸送機オスプレイの飛行を再開した。点検や整備の回数を増やせば大丈夫―。それが米軍の感覚かもしれないが、日本では到底受け入れられるものではない。

 横田基地所属の空軍機が鹿児島県・屋久島沖に墜落した昨年11月の事故を受け、飛行を停止していた。沖縄県では早速、米軍普天間飛行場を離陸した海兵隊機がごう音を響かせて市街地上空を飛んだ。

 事故原因の詳細は米側の意向で明らかにされていない。しかも米軍はまだ調査を継続中という。その段階でどうして安全と断言できるのか。配備先の自治体や住民から憤りや不安の声が上がるのは当然だ。原因の究明と、その説明なき飛行再開は許されない。

 防衛省は飛行停止解除に当たり、事故原因となった部品の不具合が特定され、構造上の欠陥はなかったと米軍から報告を受けたという。

 木原稔防衛相は「米軍の説明が合理的だと得心する域に達した」と述べたが、肝心な原因を伏せたままでは全く説得力はない。配備先の基地が立地する自治体への説明もおざなりで、「地元の不安や懸念を払拭するため丁寧な説明をする」の言葉が空々しい。

 オスプレイは開発段階から事故が絶えず、安全性に対する懸念が増大する中で今回の事故は起きた。岩国市によると、防衛省の担当者は異常探知システムによる点検や整備の頻度を増やす対策を講じれば安全に飛行できると強調したという。これでは今後も異常が起こるのが前提、と言っているのと同じではないか。

 そもそも米空軍特殊作戦司令部の発表では、不具合の原因自体は不明で調査を継続中である。防衛相が、原因に関する情報や再発防止策の内容をどこまで把握しているのかも判然としない。

 事故後、日本政府が飛行停止を要請しても、米軍はすぐに応じなかった。世界各地に配備する470機の飛行を止めたのは1週間後だ。今回も部隊運用に支障が出るとして飛行再開を焦る米軍からの一方的な要請を受け入れざるを得なかったのではないか。

 しかし、搭乗員8人全員が死亡した重大事故の現場は日本である。墜落は岩国基地から沖縄・嘉手納基地に向かう途中の海上で起きた。これが市街地だったら多くの人が巻き添えになったはずだ。

 民間機の事故であれば、第三者による科学的な検証を徹底し、その結果を踏まえ原因と再発防止策を公表するのが当然だ。国も調査に入る。

 軍の機密や日米地位協定を盾に、これらの過程をおろそかにすることは認められない。日米両政府は飛行再開の決定を撤回すべきだ。少なくとも陸上自衛隊保有機の飛行再開は、日本独自で慎重に判断する必要がある。

 政府が優先すべきは米側の言いなりになることではない。国民の命と安全を守るための真摯(しんし)な対応だ。安全保障上、日米同盟は重要である。それが国民の信頼に基盤を置くことを忘れてはならない。

 

米軍の無謀訓練強行 日米同盟の犠牲拒否する(2024年3月15日『琉球新報』-「社説」)

 米軍の傍若無人は目に余る。それを容認する日本政府の無策も許しがたい。県民や国民の安全、安心を脅かす同盟関係を放置する日米両政府に抗議する。

 昨年11月の鹿児島県・屋久島沖での墜落事故を受け、全世界で運用を停止していた垂直離着陸輸送機オスプレイの飛行が再開した。普天間飛行場所属機が次々と離陸し、周回飛行をしているのが確認された。同じ日に嘉手納基地では4カ月連続でパラシュート降下訓練が実施された。受け入れがたい暴挙である。
 オスプレイの事故原因は究明されていない。パラシュート降下訓練に関しては日米特別行動委員会(SACO)合意に反するものだ。県や関係する自治体は飛行再開や訓練を容認していないのだ。
 それにもかかわらず米軍はオスプレイの飛行再開とパラシュート降下訓練を強行した。米軍の暴挙と、それを阻止しない日本政府の不作為を受け入れるわけにはいかない。日米両国は対等な関係ではないのか。私たちはこれ以上の日米同盟による犠牲を拒否する。
 林芳正官房長官オスプレイ飛行再開について「南西地域をはじめとするわが国の防衛のため」と説明し、県や地元自治体の反発について「丁寧な説明に努めていきたい」と述べた。
 事故原因や安全対策についての十分な説明がないままの飛行再開を県や宜野湾市は批判しているのだ。そのことを林氏は認識していないか、意図的に無視していると言わざるを得ない。約3カ月の飛行停止で操縦士の練度が落ちている可能性もある。それにもかかわらず、米軍は通常訓練を実施した。県民が抱く不安を政府は直視すべきである。
 一方、連続する嘉手納基地でのパラシュート降下訓練は昨年12月に始まった。米軍は伊江島補助飛行場の滑走路の状態悪化を挙げている。補修工事完了の時期は示されておらず、嘉手納基地での訓練は長期化する可能性がある。
 1996年のSACO最終報告で読谷から伊江島へ訓練は移転された。ところが2007年に「嘉手納基地を例外的な場合に限って使用」と追加合意し、基地負担軽減を目指す合意がゆがめられた。
 2月の訓練に際しても、木原稔防衛相は会見で「今回の訓練は、『例外的な場合』に該当し、SACO最終報告が形骸化しているとの指摘はあたらない」と述べた。しかし、「例外」だとする訓練が4カ月も続けば、そのような解釈や弁明は通用しない。訓練に抗議する県や周辺自治体を愚弄(ぐろう)するものである。
 構造的欠陥が指摘されているオスプレイの飛行を県民は容認していない。嘉手納基地だけでなく伊江島うるま市津堅島沖で実施するパラシュート降下訓練にも県民は強い抵抗感を抱いている。米軍、日本政府はそのことを認識すべきだ。

 

オスプレイ飛行再開 住民無視の暴走行為だ(2024年3月15日『沖縄タイムス』-「社説」)

 県が強く抗議し、宜野湾市が懸念を示し、県民が不安を訴える中、米軍普天間飛行場オスプレイが飛行を再開した。 昨年11月の鹿児島県屋久島沖での墜落事故を受け、12月7日に全世界で飛行停止してから約3カ月。この間、県や宜野湾市は事故原因や安全対策について説明を求めてきた。だが具体的な説明もないままの飛行強行は、住民を無視した「暴走行為」だ。

 14日飛行したのは海兵隊仕様のMV22オスプレイ。午前8時50分に1機目が飛び立った後、午後6時過ぎまでに延べ13機が離着陸した。那覇市上空でも独特の重低音を響かせ、伊江島でも確認された。

 米軍は当初、段階的に再開するとしたが、実際は県内の広範囲を飛び回った。玉城デニー知事は「強い憤りを禁じ得ない」と怒りをあらわにし、宜野湾市の松川正則市長も「納得できない」と不快感を示した。

 あらゆる事故において重要なのは、徹底した原因究明とそれに基づく再発防止策、住民への説明責任だ。事故は「特定の部品の不具合」で生じたとするが、部品が何なのか、なぜ不具合が生じたか、などの疑問への回答はない。

 少なくとも米軍の調査報告書が公表されるまで、飛行を停止するのが筋である。

 日本政府も米側に徹底した説明責任や安全性の担保を迫るべきだ。だが木原稔防衛相は、米側から「訴訟や懲戒処分の対応などもあり、米国内法上、詳細を明らかにできない」とされたと説明した。

 国民の命や生活を守るために力を尽くすどころか「子どもの使い」のようだ。主権の放棄に等しい。

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 沖縄の軍事要塞(ようさい)化が急速に進んでいる。

 オスプレイ飛行再開と同じ日、米軍は嘉手納飛行場でパラシュート降下訓練を行った。本来は伊江島補助飛行場での実施が原則だが、滑走路の不具合などを理由に「例外」とした。県の中止要請を聞き入れず、4カ月連続の実施は日米合意の軽視である。

 うるま市陸上自衛隊勝連分屯地では、住民への説明がないまま地対艦ミサイル部隊の配備が進んでいる。

 石垣では米海軍のミサイル駆逐艦が石垣港に入港し、3日間停泊。県内の民間港に米駆逐艦が入るのは初めてという異例の事態となった。

 米軍が自衛隊の駐屯地を共同使用し、日米が共同訓練を重ねる日米一体化が進む。沖縄の要塞化が進めば、相手国からの攻撃対象となる危険性も高まる。負担軽減どころの話ではない。

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 住宅が密集する宜野湾市中心部にある普天間飛行場は「世界一危険」といわれる米軍基地だ。そこから再びオスプレイが離着陸し人々の頭上を飛び回るとなれば、県民の不安や恐怖は尽きない。

 玉城知事は県民軽視の現状に「オスプレイ配備の即時撤回を求める」と語気を強めた。重大事故を起こしてもまともに説明せず、わが物顔で飛行する状況は腹に据えかねる。普天間の危険性を除去するにはオスプレイの配備撤回しかない。