「加賀と能登は一つ、一緒に盛り上げたい」輪島の珈琲店店主が2次避難先で再確認した生きがい(2024年3月16日『東京新聞』)

 
 北陸新幹線敦賀まで延伸開業する16日、能登半島地震で被災した石川県輪島市コーヒー店の女性経営者が同県小松市のイベントに出店する。加賀地区に2次避難したことが縁で、今まで遠い存在だった加賀が身近になったという。「『加賀と能登は一つで石川』という思いを強くした。加賀の人と一緒になって、石川を元気にしたい」と話す。(長屋文太)

◆16日、北陸新幹線延伸に合わせたイベントに出店

加賀と能登で一緒になって頑張りたいと語る山崎里香さん

加賀と能登で一緒になって頑張りたいと語る山崎里香さん

 出店するのは、輪島市河井町で自家焙煎(ばいせん)コーヒー店「Hosi bosi coffee(ホシボシコーヒー)」を営む山崎里香さん(40)。地震で自宅も店舗も被災。現在も断水が続き、営業を再開できていない。「持病がある両親や、子どもの世話に追われ、コーヒーを入れる余裕なんてなかった」。1月下旬、家族で同県加賀市片山津温泉の旅館に2次避難することになった。
 旅館に移り、不自由なく暮らせるようになったが、何かしてもらうばかりの状況に申し訳なさを感じていた。そのとき、偶然出会った市内のカフェ店主に誘われ、2次避難者向けにコーヒーの提供を始めた。豆や道具はその店主らが提供してくれた。「好みを聞き、お客さんに合うコーヒーを出して喜んでもらう楽しさをやっと思い出した」
 
加賀地域の人や能登からの2次避難者ら多くの人にコーヒーを飲んでほしいと話す山崎里香さん

加賀地域の人や能登からの2次避難者ら多くの人にコーヒーを飲んでほしいと話す山崎里香さん

 自分らしさを取り戻した山崎さん。2月22日、輪島に戻り、店舗再開に向けて動き始めた。「加賀の人たちに本当に良くしてもらった」。知人の紹介で3月16日の北陸新幹線敦賀延伸に合わせ、JR小松駅近くの商店街で開かれるイベント「北国とおり町マーケット」の存在を知った。復興支援のための能登の出店希望者枠に、迷わず手を挙げた。
 山崎さんは「加賀の人たちが新幹線の延伸に向け、以前から準備してきたところに能登半島地震が起きた。『加賀と能登は一つ』という思いで、こんなときだからこそ盛り上げたい」と意気込んでいる。マーケットは午前10時から午後5時まで。