2次避難の期限 被災者が居場所に困らぬよう(2024年2月25日『』-「社説」)


 能登半島地震で、被災者が2次避難中の旅館やホテルの滞在期限が迫っている。居場所に困る事態にならないよう、十分な配慮が必要だ。

 石川県の被災地から金沢市内や温泉地などに避難している人は約5000人に上る。県は滞在期限を2~3月までと想定している。北陸新幹線の金沢―敦賀間の開業を3月に控え、観光客の増加が見込まれるためだ。

 県は移転先として、建設を進めている仮設住宅のほか、民間の住宅を県が借り上げる「みなし仮設住宅」、自宅を修繕して住むといった選択肢を示している。

 仮設住宅は、県が4000戸を準備しているが、入居希望は7000件を超えている。平地が少なく用地の確保が難しいため、ニーズに追いつけない状況だという。2階建てや民有地の活用などに努め、建設を急いでほしい。

 みなし仮設住宅に入るにしても、あまり遠くには行きたくないという被災者が多いだろう。県内で被災の少なかった地域や隣県の、できるだけ近くにアパートなどを確保するのが望ましい。

 学齢期の子供がいる家庭では、移転に伴って、通学先を変えることをためらうケースもあろう。被災者が抱えている事情は様々だ。国や自治体は、要望に耳を傾け、丁寧に対応する必要がある。

 被災者が2次避難している旅館やホテルは、地震の後、予約のキャンセルが相次いだ。コロナ禍に苦しんできた宿泊施設にとって新幹線延伸への期待は大きい。避難者の受け入れが長引けば、本来の業務に支障が出る恐れもある。

 ただ、ようやく落ち着きを取り戻した被災者の心情を思えば、観光振興と避難者受け入れの両立を模索する余地はないだろうか。

 被災の少なかった小松市の3旅館は、受け入れを7月頃まで延ばすという。加賀市のホテルは従業員寮を提供することにした。

 他の宿泊施設も、できるだけ柔軟に対応してもらいたい。少なくとも、断水が完全に解消されるまでは支援が必要だろう。

 避難者が希望した場合、滞在中にアルバイトとして雇用する可能性を探ってはどうか。2次避難者の受け入れを継続する宿泊施設に対しては、国や自治体が支援の拡充を検討することも一案だ。

 福井や富山といった隣県の旅館やホテルが、売り上げの一部を被害の大きかった能登地方に寄付する取り組みが広がっている。北陸全体の復興を目指し、助け合う機運を高めることが大切だ。