28日に投開票される衆院島根1区(松江市など)の補欠選挙で、投票率の行方が注目されている。島根県は全国屈指の高い投票率を誇るが、今回は「政治とカネ」の問題で政治不信が高まる中で低下が懸念され、陣営関係者らは投票の呼びかけを強めている。
島根県選挙管理委員会によると、県全体の衆院選投票率は、1969年から2014年まで80%台後半~60%前後で推移し、16回連続で全国1位。17年と21年の直近2回はそれぞれ4位、3位だった。この間、1996年に全県1区の中選挙区制から小選挙区比例代表並立制に変更され、県内の選挙区数は96年と2000年は3区、03年以降は2区になった。
島根県立大の光延忠彦教授(政治学)はこれまで投票率が高かった理由について、中選挙区時代の激しい選挙戦が影響していると指摘する。竹下登・元首相らを輩出した同県では、かつて複数の自民党陣営と野党陣営が中山間地の集落にまで分け入って有権者にアピールしていた。光延教授は「住民のほとんどが、投票に行くのは当然と感じるようになった」と言う。
しかし、人口減少と少子高齢化が顕著となり、熱は下がりつつある。さらに今回は、自民派閥による政治資金規正法違反事件を受けて政治不信が広がり、有権者の関心の低下が指摘される。
補選は、全国一斉で行われる通常選よりも投票率が下がる傾向がある。また、投票日は大型連休中で、レジャーに出かける人らが期日前投票を利用することが想定されるが、期日前の投票率は17~26日の10日間で19・24%と、21年より1・17ポイント低い。
島根1区は今回、自民新人と立憲民主党前議員の一騎打ちとなっている。21年の1区全体の投票率は61・23%だったが、今回は6割を切るとの見方が多い。
両陣営は、SNSで「投票に行ってほしい」などと投稿したり、街頭演説で期日前投票を呼びかけたりしてきた。県選管も、山陰を拠点に活動する女性アイドルグループを広告塔に起用するなど啓発に力を入れる。