偉そうに歩くな(2024年3月4日『琉球新報』-「金口木舌」)

 イスラエルイスラム組織ハマスの戦闘開始からやがて5カ月になる。2月29日はガザ北部で112人が死亡した。支援物資を待つ市民にイスラエル軍が発砲した

▼「…7月18日286人、7月19日247人、7月20日252人/君の村、壊滅らしいとiPhoneを渡して水煙草に炭を足す」(「砂丘律」より)。気鋭の歌人アラビア語通訳の千種創一は詠む
▼おそらくシリア内戦の2012年ごろの死者数のことだろう。11年の「アラブの春」から続く泥沼はまだ終わらず、死者は40万人超
▼ガザの死者は3万人を超え、57万人超が飢餓の手前にいるとされる。沖縄戦の県民総戦没者は12万2千人余。どの戦争も犠牲者はほとんどが住民で、子どもや女性にも容赦などない
▼「偉そうに歩くな 大地の土は死者から出来ているのだから」(アブルアラー・アル=マアッリー、「砂丘律」より)。中東では著名なシリアの詩人の言葉で、沖縄の人はよく知るであろう感覚。ジェノサイドの連鎖を断ち切るため、いかなる戦争も許されないと沖縄から伝えていく。