実質賃金 働き手が受け取る額面の給与に、物価変動の影響を反映させた指標。基本給や残業代など給与の合計を、モノやサービスの値動きを示す消費者物価指数で割って算出する。物価が給与以上に上がれば、賃金の実質的な価値は下がるため、働き手の購買力を示す指標になっている。
◆「収入が増えても手元に残るお金が減っている」
特売日でにぎわう野菜売り場=東京都墨田区の「スーパーイズミ業平店」で
東京都墨田区のスーパーイズミ業平店で毎週火曜日にあるセール。約30種類の食品が税込み83円で売り出され、開店直後から多くの買い物客でにぎわった。「生活苦だから特売品しか買わない」(80代女性)、「野菜が安いので頻繁に来ている」(20代女性)。常連客らはそう口をそろえた。 30代の女性会社員は「賃金は上がったが、食費などの支出も増えており、手元に残るお金は減っている」と話した。同店の五味衛社長によると、セールの日は円安で高値となった輸入品のバナナが人気を集め、物価高を背景に食費を抑える買い物客が増えたという。
総務省の家計調査によると、2人以上の世帯が消費に使った金額は27万9868円(2月時点)。物価変動の影響を除いた実質で12カ月連続の前年割れとなった。
給与の額面に当たる名目賃金はプラスを維持するものの、実質賃金のマイナスが過去最長となった理由について、ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎氏は「円安がなかなか止まらず、歴史的な高さの物価上昇率が続いた影響が大きい」と分析する。
◆「7~9月期」か「10~12月期」か、割れる予測
春闘の賃上げ率は現段階で5%超と近年最高だが、「春闘の結果が賃金に反映されるのは夏ごろになる」(斎藤氏)見通しだ。このため日本経済研究センターによる4月の調査では、実質賃金がプラスになる時期について、エコノミスト38人のうち15人が「7~9月期」と回答。14人は「10~12月期」とみている。
1ドル=150円台の歴史的な円安水準が続いているため、プラス転換がさらに遠のく可能性もある。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎氏は「円安や原油高などで物価が上振れる懸念もある。春闘での賃上げ効果が相殺されれば、生活にかかる費用が増える中、働く人の実感は厳しくなる。節約志向が強まりかねない」と話した。
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