女性管理職が多い「りそなHD」、目指すのは「女性に支持される銀行」 何を変えた? 人材確保にも追い風(2024年3月9日『毎日新聞』)

 
 経営危機がきっかけで、女性活用に積極的になった金融機関がある。女性管理職比率が金融業界で高水準のりそなホールディングス(HD)だ。こうした長年の取り組みは、率直に意見を言える職場の雰囲気や採用での強みにつながっている。

◆21年前の経営危機を機に、女性の登用が加速

 「りそな銀行でなければ、支店長にはなっていないと思う」。小岩支店(東京都江戸川区)で昨年4月から支店長を務める舟木英生子(えいこ)さん(46)は言い切る。入社した2000年当時は、男性を中心とした総合職が管理職をするのが当たり前で、一般職採用の舟木さんは支店長になることを想像できなかった。
 
 会社が変わる契機は03年の経営危機だ。政府の公的資金を受け入れ実質国有化になったことで給与が大幅に削減され、多くの中堅男性社員がりそなを去った。一方、再建を託された元JR東日本副社長の故・細谷英二さんは女性に支持される銀行を目指し、同行初の女性支店長が5人誕生。多くの女性が管理職に登用された。
 会社からの呼びかけで舟木さんも昇進試験に挑戦した。窓口業務を中心に経験を積み、本部の審査部をへて支店長になった。「女性の考えを取り入れようとする社風や、管理職の心理的負担を軽くするいろいろな仕組みがあったことが大きい」と振り返る。

◆育休後の復職を支えるプログラムを整備

経営陣への提言をまとめる「りそなウーマンズカウンシル」のメンバー

経営陣への提言をまとめる「りそなウーマンズカウンシル」のメンバー

 女性が働きやすい環境整備に貢献したのは、女性の声を経営に反映させる目的で05年に発足した「りそなウーマンズカウンシル」という組織だ。若手からベテランまでさまざまな部署の女性十数人が1年かけて具体策をまとめ、経営陣に提言する。女性が支店長になったときに支店長経験者らに相談ができるメンタリング制度や、育休を取った後に復職を支えるプログラムなどが生まれた。
 りそなHDや埼玉りそな銀行などグループ6社のマネジャー(課長級)以上の女性管理職比率は22年度末で31.4%。厚生労働省の雇用均等基本調査(22年度)によると、全産業で12.7%、金融・保険業は15%で、10ポイント以上高い。
 「率直に意見を言いやすい雰囲気になっている」。ダイバーシティ推進室長の黒川暁子さん(46)は女性が働きやすい環境づくりの効果を挙げる。こうしたイメージは「男女問わず優秀な人材の確保につながっている」として、採用でも有利に働いているという。
 今後について、黒川さんは「これまで女性の少なかった法人営業などでも管理職を増やす」と話す。30年度には女性管理職比率を40%以上とするのが同社の目標だ。(寺本康弘)