女性が力を生かせる日本に(2024年3月8日『日本経済新聞』-「社説」)

誰もが力を発揮しやすい社会を目指したい


 8日は国連が定めた「国際女性デー」だ。改めて日本の現状をみてみると、女性が十分に力を発揮できている国とはとてもいえない。女性本人にとってはもちろん、社会にとっても損失だ。

 とりわけ遅れが目立つのが、政治分野だ。列国議会同盟の1月1日時点のまとめでは、日本の国会議員(衆院)の女性比率は約10%で、世界186カ国中165位だった。他の主要7カ国は米国が約29%で、ほかは3割を超える。

 男女の候補者数ができる限り均等になることを目指す法律が約6年前にでき、改正でセクハラ対策なども盛り込まれた。それでも道のりは途上だ。多様な人材がいてこそ政策議論は深まるだろう。

 来年には夏に参院選があり、10月に衆院議員の任期が満了する。候補者などの一定割合を女性に割り振る「クオータ制度」について前向きに議論を始めるべきだ。

 経済分野でも、日本は立ち遅れている。経済協力開発機構OECD)のデータによると、フルタイム労働者の男女の賃金格差は約21%で、OECD平均の約12%を大きく上回る。女性の管理職・役員比率は低く、低収入の非正規で働く人も多い。

 政府は昨年、30年までに東証プライムに上場する企業の女性役員を30%以上にする目標を掲げた。女性の力を生かせない企業は投資家の信頼を得られず、就職希望者の目も厳しくなる。多様な発想を成長の源泉にするうえでも企業は女性の育成・登用を急ぐべきだ。

 いずれも問題の根本には「男性は仕事、女性は家庭」という根強い意識とそれを前提にしたさまざまな慣行・制度がある。家事・育児分担は女性に偏り、ハラスメントも後を絶たない。幅広い対策が必要だ。

 指導的地位に占める女性の割合を30%程度にするとの目標を政府が最初に掲げたのは03年だ。当初は「20年まで」としながらも達成できなかった。多様な人材を生かせぬ硬直性は、日本の成長力を損なう。もはや先送りはできない。