無人攻撃機 乱用防ぐルール作りが急務だ(2024年3月3日『読売新聞』-「社説」)

 戦場から離れた場所で操縦できる無人機は、攻撃側の人的被害を想定せずに済むため、安易な武力行使につながりかねない。国際的なルール作りを急ぐ必要がある。

 激戦が続くウクライナでは、ロシア、ウクライナの双方が無人機を偵察だけでなく、攻撃にも活用している。露軍は自爆型無人機でウクライナのインフラ施設などを破壊し、ウクライナ軍も水上無人艇で露軍艦艇を撃沈した。

 イスラエルイスラム主義組織ハマスの戦闘でも無人機が使用され、ハマス幹部が殺害された。

 無人機の軍事利用が拡大しているのは、戦闘機やミサイルに比べて安価で、長時間の連続運用が可能なためだろう。

 日本も2022年末に定めた防衛力整備計画で、無人機の導入に23~27年度の5年間で総額1兆円を投じる方針を打ち出した。有人機が担っている任務を無人機に代替させることで、自衛隊の人員不足を補う狙いもある。

 中国は、多数の小型無人機を群れのように飛ばして「飽和攻撃」を仕掛ける技術の確立を目指している。防衛省は、無人機を一斉に撃ち落とすレーザー装置を開発中だ。防御体制も強化したい。

 無人機の活用は拡大の一途をたどっているが、無人機による攻撃は倫理的な問題を抱えている。

 攻撃側は、モニター画面越しに操作することからゲーム感覚に陥り、人の命を奪うことをためらう感覚が 麻痺まひ しかねない。

 特に、人工知能(AI)の発達で、人の判断を介さず、AIが自ら標的を選び、攻撃も行う「自律型致死兵器システム(LAWS)」が実用化される恐れもある。

 近年、米中露などは、LAWSに関する国際的なルールを検討しているが、厳格な規制を求める国と、規制を最小限に抑えたい国の間で意見が対立している。国連総会は昨年末、LAWSの規制に向けた決議を採択した。

 日本政府は「LAWSを開発しない」という立場を表明し、まずは法的拘束力のない行動規範の策定を目指している。

 そもそも国際人道法は、戦争において武力行使の対象は軍事目標に限り、無差別な攻撃を禁じている。無人機を活用する場合でも、民間人を対象にしないなどの原則に沿った規制を各国間で確認する必要があるのではないか。

 まして、AIに人命を奪う判断をさせることなど、あってはならない。政府は厳格で実効性の高いルール作りを主導すべきだ。