支援継続、足元揺らぐ 欧州各地でポピュリスト政党が台頭 対立表面化(2024年2月23日『毎日新聞』)

ダボス会議で話す北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長(左)と欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長(中央)、ウクライナのゼレンスキー大統領(右)=スイス・ダボスで2024年1月16日、ABACA・ロイター拡大
ダボス会議で話す北大西洋条約機構NATO)のストルテンベルグ事務総長(左)と欧州連合EU)のフォンデアライエン欧州委員長(中央)、ウクライナのゼレンスキー大統領(右)=スイス・ダボスで2024年1月16日、ABACA・ロイター

 ロシアによるウクライナ侵攻から24日で2年。米国の支援停滞で、ウクライナは兵器や弾薬が不足するなど影響が広がる。欧州ではウクライナ支援に懐疑的なポピュリズム政党の足音が響く。侵攻が長期化する中、日本も持続的な支援ができるのかが問われている。

 ウクライナ情勢を巡り米国の関与が危ぶまれる中、ロシアの脅威が間近に迫る欧州は独自の軍事力強化に動いている。ドイツで開かれたミュンヘン安全保障会議で17日、ショルツ独首相は「欧州人は今、そして将来にわたり自分たちの安全保障をより重視しなければならない」と訴えた。
 欧州は長く、安全保障政策を米国に依存。大半の国が北大西洋条約機構NATO)加盟国の目標である国防費の国内総生産GDP)比2%を達成できず、米国から不満の声が出ていた。しかし、今年は加盟31カ国のうち18カ国がこの目標に届き、欧州の加盟国全体で初めて2%に達する見込みだ。

 11月の米大統領選でトランプ前大統領が返り咲きを果たせば、米欧の同盟関係はさらに冷え込む恐れがある。欧州の一部の政治家からは「欧州はもはや米国の『核の傘』を頼ることはできない」として、欧州独自の核抑止力の必要性を唱える声すら出ている。

 だが、NATOの盟主である米国の積極的な関与なしに、ロシアへの軍事的な対抗を続けるのは難しい。ウクライナ支援も同様だ。

 ドイツのキール世界経済研究所によると、1月時点で欧州連合EU)と各加盟国が約束した軍事や民生も含めた支援総額は約1441億ユーロ(約23兆4900億円)で、米国の677億ユーロのほぼ倍に上る。EUは2月1日、4年間で500億ユーロの資金支援も決めた。 それでも、同研究所のクリストフ・トレベシュ氏は「米国からさらなる支援がない場合は、欧州は現在の軍事支援を少なくとも倍増させなければならない」と指摘する。

 欧州内にも分断がある。ロシアのプーチン政権と近いとされるハンガリーのオルバン首相は、対露結束で欧州の足並みを乱している。欧州のほかの国々でも、ウクライナ支援に否定的なポピュリスト政党が勢いを増している。また、EUが現在進める新たな軍事支援の協議では、独仏がそれぞれ自国の財政や軍事産業に有利な仕組みを求めるなど、加盟国間の意見の対立が表面化している。

 ドイツのベルテルスマン財団の世論調査(昨年12月)によると、ウクライナへの武器供与に賛成すると答えたEU市民は55%で、前年6月の60%から減った。【ブリュッセル岩佐淳士

【時系列で見る】