大地震対策 能登の教訓をどう生かすか(2024年3月3日『読売新聞』-「社説」)

 大規模地震の予測や対策に、万全を期すことは困難だろう。それでも被害を最小限に抑えるためには、何が必要なのか。能登半島地震の教訓を生かし、防災計画を整えたい。

 能登半島地震で甚大な被害が出た石川県輪島市などの北陸地方はこれまで、大規模地震の発生確率は低いとされてきた。政府の地震対策も、首都直下地震南海トラフ地震に重点を置いていた。

 今回の事態は、大地震の発生を正確に予測することがいかに難しいかを改めて示した。地震大国の日本では、いつ、どこでも大地震が起こりうることを前提に備えを強化することが重要だ。

 災害対策基本法は、国に「防災基本計画」、自治体に「地域防災計画」の作成をそれぞれ義務づけ、大地震などが発生した場合は実情を踏まえてその都度見直すよう求めている。

 石川県もほぼ毎年、地域防災計画を修正していたが、その前提となる被害想定は1997年度に策定したままで、県は2025年度に更新する予定だったという。

 現想定は、「能登半島北方沖の地震」の被害を「ごく局所的で、災害度は低い」と見積もっていた。輪島市の非常食の備蓄量は、これを基にしており、今回の地震では発生初日に底をついた。

 発生が元日だったため、帰省者ら市内に滞在する人が普段より多かったことも影響した。

 他の自治体も、現在の被害想定が、地震予測に関する最新の知見や、高齢化や過疎化など地域社会の変化を的確に反映しているかどうか、点検する必要がある。

 東京都は、首都直下地震の想定を数年おきに改定している。国は、被害想定の策定を自治体任せにせず、見直しを10年ごとに行うなどの目安を示すべきだ。

 地域防災計画については、能登半島地震を教訓に、見直しの動きが各地で広がっている。

 青森県は、能登の被災地で大量の災害ごみの処理が課題となっていることを踏まえ、県内で災害ごみを処理する場合、国と県、市町村が連携を強める必要性を計画に新たに盛り込んだ。

 福島県は、能登で道路寸断による集落の孤立が相次いだため、県内で孤立の恐れがある地区の備蓄食料を増やす方針だ。

 外部の支援が入るまで、1週間から10日間、住民が持ちこたえるには、食料などを事前にどの程度準備する必要があるのか。各自治体が具体的に算定し、計画に盛り込むことが不可欠だ。