北欧のスウェーデンが北大西洋条約機構(NATO)に加盟することが決まった。
2年前にロシアがウクライナに侵攻したことを機に申請していた。加盟国中、最後まで難色を示していたハンガリーも承認したことで、32カ国目として加わる。
昨年4月にはフィンランドが先行して加盟した。これによりロシアと欧州に面するバルト海のほぼ全域を、NATO加盟国が取り囲むことになる。
ロシアと北欧が緩衝地帯もなく対峙(たいじ)することになり、緊張がいっそう高まる懸念がある。軍事衝突の危険性が高まり、偶発的な紛争も起きかねない。
これ以上対立を激化させてはならない。加盟国は外交を尽くして緊張緩和に取り組む必要がある。
NATOは加盟国に対する攻撃を全加盟国への攻撃とみなす、集団防衛の軍事同盟だ。
スウェーデンは欧州で有数の軍事大国で、武器輸出大国でもある。とりわけバルト海の安全保障には長年取り組んできた。
19世紀の初頭以降、200年にわたって非同盟・中立を国是とし、2度の世界大戦にも参戦しなかった。方針を転換したのは、それだけロシアの脅威に対する危機感が強いからにほかなるまい。
ロシアのプーチン大統領はウクライナ侵攻について、NATOの東方拡大の阻止を口実としていた。だが北方で拡大が実現することになり、侵攻は裏目に出た。自ら墓穴を掘ったと言うほかない。
プーチン政権は欧州をにらむ部隊の強化を図り、NATOに対抗する構えだ。核兵器を搭載可能な戦略爆撃機も配備するという。
核による威嚇をエスカレートさせかねない。言語道断だ。
そもそも侵攻によって国際秩序を揺るがしているのはロシアだ。直ちに撤退しなければならない。
力による現状変更を認めないためにも、NATOはウクライナ支援を継続することが欠かせない。
懸念されるのは米国の対応だ。野党共和党がウクライナ支援に消極的で、予算が滞っている。
11月の大統領選に向けて、共和党最有力候補のトランプ前大統領はNATO加盟国の防衛に後ろ向きな姿勢を見せている。
危機感を持ったフランスのマクロン大統領はウクライナへの地上部隊派遣を「排除しない」と発言したが、英独などは否定した。
こうした足並みの乱れは、ロシアを利するだけだ。加盟国はそのことを自覚してもらいたい。