能登半島地震の発生直後、交流サイト(SNS)に偽・誤情報があふれたことを受け、総務省の有識者会議が今夏をめどに対策をまとめる。ただ、投稿の削除を法律で義務化すると「表現の自由」の侵害が懸念されるなど課題もある。専門家は「SNSを運営するプラットフォーム(PF)事業者が責任を持って対応すべきだ」と指摘する。(嶋村光希子)
◆陰謀論、寄付募集…救助を妨げた事例も
いずれも地震発生後、SNSに書き込まれた虚偽の投稿だ。偽の救助要請が相次ぎ、本来の救助活動の妨げとなる事例もあった。情報の真偽を検証する「日本ファクトチェックセンター」を運営する「セーファーインターネット協会」の吉田奨(すすむ)専務理事は「災害時にはさまざまな情報が飛び交うため、実際と異なる被害投稿や不確かな救助要請、虚偽の寄付募集、陰謀論など同じような偽情報が繰り返し拡散される」と指摘する。
◆閲覧数多いと広告収益、Xが導入して加速
また偽情報の拡散を助長していると指摘されるのが、X(旧ツイッター)が昨夏に導入した、投稿の閲覧数(インプレッション)が多いユーザーが広告収益を得られる仕組みだ。収益目的で「インプ稼ぎ」と呼ばれる過激な投稿も相次ぐ。
インプレッション 短文投稿サイトのX(旧ツイッター)で投稿が閲覧された回数。「ツイッター」から「X」に名称変更した直後の2023年夏から、有料会員の加入や規定のフォロワー数などいくつかの条件を満たすと、インプレッション数に応じて広告収益を分配する仕組みを導入した。
この中で、LINEヤフーは、不適切な投稿を1月末までに1821件削除したことを明らかにした。同社の担当者は「時間的制約などから、何が偽情報であるか範囲を定めることが困難な場合もある」と、課題を明らかにした。