毎日新聞2024/2/23 00:01(最終更新 2/23 00:23)571文字
天皇陛下の64歳の誕生日に合わせて宮内庁が公開した天皇、皇后両陛下の近況の写真と映像には、能登半島地震の被災地に寄せる両陛下の思いが表れていた。
写真と映像は9日に皇居・御所で撮影。両陛下が机に向かって並んで座り、穏やかに語り合う姿が写されている。そばの机や棚に飾られたのは能登地方の伝統工芸品。側近によると、両陛下が相談して選んだといい、撮影時にかつて能登地方を訪れた時の思い出を懐かしむ場面もあった。
机には輪島塗の二つの箱が置かれていた。御懐紙箱(おかいしばこ)と呼ばれ、1月にあった歌会始の儀で両陛下の歌を書いた紙を運ぶ際に用いられた。昭和、平成を通じて輪島塗が慣例となっており、現在の箱は陛下の即位に伴い新調された。
天皇陛下の隣の棚に珠洲焼窯変壺(ようへんつぼ)、雅子さまの隣の棚に輪島塗沈金飾盆(ちんきんかざりぼん)がそれぞれ飾られ、飾盆は人間国宝の前史雄さんが手掛けたという。いずれも天皇陛下が皇太子時代に石川県を訪問した際の献上品で、窯変壺は2003年、飾盆は18年に当時の県知事から贈られた。
側近は「両陛下は輪島塗や珠洲焼の美しさに改めて感銘を受けた様子だった。伝統工芸が伝えられていくことを含め、一日も早く復旧・復興が進み、被災者の生活が元に戻ることを心から願われるお気持ちをお示しになった」と推察した。【村上尊一】