新潟県中越地震で手腕を発揮した長島忠美氏に比べ、馳浩知事に強いリーダーシップは感じられない(2024年2月22日『サンケイスポーツ』-「甘口辛口」)

石川県の馳浩知事

■2月22日 石川県が発表した令和6年度予算案に「大阪・関西万博を見据えた国際文化交流」の予算として1000万円が計上され、物議を醸している。能登半島地震の復興支援を織り込んで予算案の総額は1兆1100億円。平常時なら1000万円は問題にならない額かもしれないが、被災地ではまだ約1万2000人が避難生活を送っている。

「なぜ万博に? そんな金があったら避難所での温かい食事や、暖房の燃料費に回すのが先決では」などと県民からは批判が殺到しているという。しかし、馳浩知事は「万博はやるべきと一貫して思っている」「私は維新の顧問」と悪びれる様子はないようだ。

昨年の元日は日本武道館でプロレスの試合に出て物議を醸した。年末に「もう元日から裸はないよね」と県議にくぎを刺された今年は東京で家族と過ごしていた。地震発生で自衛隊のヘリで急きょ金沢に戻ったが、被災地で額に汗して陣頭指揮をとるような姿はあまり伝わってこなかった。被災地の首長というイメージは薄い。


 04年10月の新潟県中越地震を思い出す。壊滅的な被害を受けた人口2167人の山古志村(現長岡市)の長島忠美村長は「村民の命を守る」と異例の「全村避難」を決断した。自らも仮設住宅に入り村民を励ましながら3年後には「全村帰村」を実現。その手腕に着目した当時の小泉純一郎首相に請われ、自民党から国政(衆院)に転出した。

 

 馳氏には残念ながらそんな強いリーダーシップは感じられない。保守系3候補に分裂した22年の知事選で応援してくれたのが「万博と心中」とも揶揄(やゆ)される日本維新の会。県民より大事なものが…と思われても仕方ない。(今村忠)