能登半島地震の被災地を対象とした国の観光復興支援「北陸応援割」について、石川県の馳浩知事が3~4月に想定されている開始時期を遅らせたい意向を表明した。補助対象の宿泊施設に多くの2次避難者が身を寄せており、増加が予想される旅行客と重なる事態を避けるためだ。この方針に宿泊業界では賛否が分かれ、混乱が広がっている。
石川知事は遅らせたい意向
応援割は、北陸3県と新潟県を対象に旅行代金を1人1泊当たり最大2万円補助する。3月16日には北陸新幹線の金沢―敦賀(福井県)間の延伸開業が予定され、石川県でも観光、宿泊業界を中心に相乗効果の期待が高まる。
県は対策として滞在期間の延長を宿泊施設側に要請。2次避難者に対し、今後の住まいについて意向調査も始めた。馳知事は14日の記者会見で「石川は被害が大きい。(応援割は)富山県、福井県と一緒に始めたかったができない。両県に先に進めてほしいと伝えた」と表明。この発言内容が伝わると15日の会見では「石川全体で遅らせるのか、できるところから始めるか、事務的に詰める」とトーンダウンさせた。
国も呼応し、斉藤鉄夫国交相は16日に馳知事らと開いたオンライン会議で応援割に言及。「2次避難者に支障が生じないよう地域の実情を考慮し、開始時期も柔軟に対応していく」と述べた。石川県はホテルや旅館の経営者と意見交換し、開始時期を最終判断する。
宿泊施設からは反対の声が出る一方、理解を示す施設もある。石川県南部の小松市にある粟津温泉観光協会は2次避難者の受け入れを7月中旬まで延期する方針だ。桂木実会長は「地震を怖がっていた子どもにも笑顔が戻り、2次避難者はようやく落ち着いた。一般客を減らしてでも受け入れるのがおもてなしだ」と言う。
一方、小松市に隣接する加賀市にある山代、片山津、山中温泉でつくる加賀温泉郷協議会の和田守弘会長は「2次避難者を4月で追い出すわけではない」と前置きした上で、「(応援割は)早期に開始してほしい。観光客との両立は可能だ」と訴える。経営する旅館には「いつから応援割が始まるのか」と連日数十件の問い合わせがあるといい、「ほとんどのお客様が応援割があると期待している。延期すれば混乱する」と心配する。【萱原健一、深尾昭寛】
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