第三者から提供された精子や卵子を使う生殖補助医療について、子どもを持つことを希望する女性カップルや独身女性らが、精子提供を受けにくくなるという懸念が当事者の間で強まっている。生殖補助医療の法規制で、治療の対象が法律婚の夫婦に限られる見通しとなったからだ。海外の精子バンクも日本の医療機関では利用できなくなるとみられ、駆け込み需要のような動きも見られている。
「毎日のように当事者から不安の声が届きます。迷いながら、それでも子どもを持ちたいと思い、また懸命に育てている人たちが今後どうなっていくのか、すごく心配です」。性的少数者らの当事者団体である一般社団法人「こどまっぷ」(東京都)の長村さと子代表理事は昨年11月、国会議員会館で開いた記者会見で、涙を流して思いを語った。
対象は法律婚の夫婦のみに
生殖補助医療を巡る立法は、超党派の議員連盟が議論を重ねてきた。生まれてくる子どもの出自を知る権利を保障するため、提供者の個人情報の保管や、開示について定める内容だ。ただ、会見に先立って示された法案の「たたき台」で、精子や卵子の提供を受けられるのは、法律婚の夫婦に限定された。
公明党などから女性カップルらを対象に含めるべきだとする意見も出たが、日本では同性婚を認める法整備の議論が進んでいない。法的な親子関係が安定しないなどの観点から「子どもの福祉にそぐわない」との声も強く、まとまらなかった。議連は、今国会での法案成立を目指している。
「自分の出自を否定的に受け止めかねない」
長村さんは知人男性から精子提供を受け、2021年に男児を授かった。同性のパートナーとともに育児に励むが、「新しい法律ができれば、既に同性カップルのもとに生まれた子どもたちも、自分の出自を否定されたように受け止めかねない」と懸念する。
生殖補助医療を巡っては、これまで規制する法律はなかった。…